後悔の波と復讐の残滓
シナツの視界が真っ赤に染まる。
くそ……なんでこんな時に……。
いや……迷わなければ、間に合った。必ずやれたはずだった。
シェリーを、憎しみの鎖から解き放ってやることができたはずなのに。
最後の最後まで……なんで俺は肝心な時にヘマをしちまうんだ。
20年前のあの日も……。そして14年前のあの時も……。
後悔ばかりの人生だった。
いつまで経っても変わらない無様な自分に反吐が出る。
全て、何もかもがうまくいかない人生だ。
「本当に…いつも……俺は間に合わねぇな……エリー」
その言葉を最後にシナツはこと切れた。
ーーーーーーー
シェリーはただ呆然とそこに立ち尽くしていた。
どれ程の時が経ったのか。次第にポツリ、ポツリと空から雫がこぼれ、やがてザァーっと激しい雨が降り始めた。
冷たい雨に打ち付けられながら、彼女は目の前で横たわる父の亡骸を見下ろし続ける。
「……」
私は……何をやっているんだ。
心の中にそんな言葉が浮かんだ。
もう、私は何をどうしたいのだろう?
ただ復讐の炎に身体を焼きながら。自分を止めに来てくれた父すら殺して血に塗れた道を……屍が転がる地獄の道を這いずるように突き進んでいるような、そんな錯覚を覚える。
だが、もうここまで来たら止まれない。
やると決めたんだ、だからもう……やるしかない。
「……」
雨に混じった涙をボロボロにこぼしながら、死神シェリーは音もなくその場を去った。