間章
男は夜の街を飛んでいた。
街に吹き抜ける風となって、街全体を一望する。
必ず、この街のどこかにいるはずだ。ここで全てを終わらせよう。
俺の過去と、そしてその罪を。
生み出してしまった死神を、他の誰でもないこの俺がこの手で終わらせるために。
「っ、がはっ」
そんな風に考えていると、突然男は咳き込み始めた。
「……ちっ」
口を押さえた手を見る。そこには吐き出した血がべっとりとついていた。
「……ここで終わるわけにはいかねぇんだよ。もう少しだけもちやがれよ、このやろう」
そう毒づきながら男は血に染まる自身の手を強く握りしめる。
あと少しだけでいい。もう少しだけもってくれれば全てかたがつくんだ。
誤魔化しでも何でも構わない、とまた再び空を突き進む。
バチィン……
「……ん?」
すると、風に紛れて何かが破裂するような音を男は聞き逃さなかった。
周囲に目を凝らすと、闇に染まる路地の中から一瞬何かが光るのが見えた。
そこには黄金の長弓を握る1人の少女。
見つけた。
「見つけたぜ、シェリー」
男はとある老婆からぼったくられた薬を口に放り込みながら、迅速で路地の一角に向けて飛び込んだ。