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事件2

 ソウルが体を動かせるようになったのは次の日の昼頃だった。


「全く...なんて回復力なんだ。スロート蛇の毒を受けてもう動けるなんて.......」


 そうぶつくさと言いながら救護班はテントから出ていく。


「大丈夫かい?ソウル」


 レイが心配そうに告げる。


「レイ、シーナは?」


 声が出せるようになったソウルはレイに開口一番に尋ねた。


「それが、またいなくなっちゃったんだ」


 それを聞いたソウルは項垂れる。


「.......大体のあらましは理解したよ」


 レイは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「すまない、ぼくがついていればこんな事には」


「いや、油断したおれが悪い。とりあえずすぐにシーナを探そう」


 とにかく、彼女の誤解を解かないといけない。


 このままシーナを見つけることができなければ、もう2度と彼女と会えなくなってしまうような、そんな予感がしていた。


「そうだね。とりあえずエレナには遺跡調査は待っててもらってるから一言声をかけてから行こう」


 そしてソウルとレイはエレナのテントへと向かった。


「エレナ、悪い迷惑かけ...て.......?」


 ソウルはエレナのテントの中に声をかけるが返事がない。


 テントを開いて中を覗くと、そこはもぬけの殻だった。


「.......おい、これどう見るよ?」


「うん、きっと遺跡の方に行ったんだろうね」


 エレナの作業バッグがなくなっている。という事は待ちきれずに遺跡に潜ってしまったのだろう。


「まずいな」


 嫌がらせに毒まで使ってくるような輩が居る洞窟に独りでいるのだ。何か嫌な予感がする。


「行こう、エレナが危ないかもしれない」


 2人は洞窟に駆け出した。


ーーーーーーー


 シーナは1人呆然と立ち尽くしていた。


 ソウルが自分を利用して成り上がろうとしていることぐらい分かっていた、分かっていたはずなのに.......。


「.......なんで、こんなに苦しいの?」


 胸を抉られるような感覚にシーナは目の前の景色がグラグラ揺れていた。


「.......こんなことなら、出会わなかったらよかった」


 シーナの瞳から涙が零れる。期待してしまった。そんな自分がさらに嫌いになる。


 そんな私を...化け物として生を受けた私を受け入れてくれる人なんて、いる訳が無いというのに.......!


「おい聞いたかよ」


 その時、遠くで他の見習い騎士たちがなにやら噂をしているのが耳についた。


 それはジャガーノートのシーナの聴力であれば耳をすませば簡単に聞き取れる。


「ヨーゼフ様んとこのやつ、エレナの護衛に毒を盛ったらしいぞ?」


 毒?


 シーナは怪訝な表情を浮かべる。


「あぁ、よっぽどエレナが気に食わないんだろうな。さっきもエレナにちょっかいかけてたし」


「正直、器が小さいよな。あんな可愛い女の子相手に大人が寄ってたかってよ」


 もしかして、ソウルに毒を?


 そう考えると昨日の夜の出来事の違和感に気づく。


 ソウルはマイケルの言葉に返事をしていたか?ソウルの口からシーナを利用するという話をしていたか?


「.......っ、しまった」


 シーナは洞窟へと駆け出した。


 初日のカスパルの言葉が頭をよぎる。


「やるべき事をやれ」


「他のことはどうとでもなる」


 そうだ、私の心が弱かったせいだ。


 シーナは歯を食いしばる。私がソウルから逃げなければ、こんなややこしいことにはならなかった。


「.......ごめん」


 シーナは1人謝る。


 向き合わないといけない。


 騎士になることにも、ソウルとも、そして心に芽生えつつあるこの気持ちに。そう心に言い聞かせながら狭い洞窟の中へと突き進んでいくのだった。

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