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死神との戦い

 何故?


 ジェイガン様の事件の関係者が狙いじゃなかったのか?


 俺を狙う理由は何だ?


 様々な疑問がソウルの脳裏に湧いては消える。


 1つだけ確かなのは今この瞬間、死神の狙いがソウルなのだと言うことだけ。


「くっ、ぁぁあ!!」


 ソウルは転がるように死神からの攻撃の嵐から逃れ、一旦大きく距離を取る。


「何で……何で俺を狙う!?」


「貴様と話す口など持たない。早々に諦めて楽になりなさい」


 一方の死神はソウルの問答に応じる様子もなく、ただ命狩る本物の死神のように剣を振る。


 ダメだ、交渉の余地もない。


 何とか辛うじて凌ぎきれているが、こんなもの時間の問題だ。


 正直、ここまで持ち堪えている方が奇跡だろう。


 それに、このまま守り続けているわけにもいかない。地に伏したレイは大量の血を流したまま動く気配がなかった。


 すぐにでも治療をしなければならない。


 こんな所でレイを死なせるわけにはいかない。


「っああ!」


「っ。」


 防戦一方だったソウルが一気に攻勢に出る。


 死神の刃を受け止めるフリをしてそのまま刃を逸らす。


 ザシュッ


 代償として死神の刀がソウルの左肩を抉った。


 左肩を激痛が襲うが、それをやせ我慢してソウルは死神に反撃の一撃を打つ。


「甘いっ」


 しかし、そんな捨身で無謀な攻撃など、当然死神には通用しない。当然のように黄金の刀を引き戻してあえなく攻撃を受け止められてしまった。


「無駄だ。そんな無謀な策など通用しな……」


「いや……一瞬の隙さえあれば、それでいい!!」


 死神の攻撃を止めることさえできれば、構わない。


 ここは路地裏。周りの目など届かない。


 だったら、リスクは非常に低いはず。レイを守るためにもここは出し惜しみしている場合じゃない!!


 頼むガスト、力を貸してくれ!!



「大海を束ねし海の神、その力をここに顕現させろ!【海神】のマナ!!【ポセイディア】!!」



 ソウルの身体から蒼いマナが放出する。


 それは地面へと展開し、魔法陣を形成。そしてその中心から水の召喚獣ポセイディアが姿を現した。


「……ふっ」


 ドシン


「ぐがっ!?」


 死神はポセイディアの召喚に動じた様子もなく、淡々とソウルの腹に横蹴りを放ち、そのままソウルとポセイディアから距離を取る。


 よし。ポセイディアを出すことには成功した!


 回復魔法【深き蒼の癒し(ディープ・ブルー)】ですぐにでもレイの傷を癒してやりたいがこの魔法は隙が大きくマナの消費も激しい。


 やたらめったら使って死神に殺されるようなことがあればそれこそ終わりだ。


 せめて死神を追い払う……もしくはせめて痛手を与えてその隙に展開するしかない。



「ふ…ふはは……はーっはっはっはっ!」



 そんな風に思考を巡らせていると、死神が高笑いし始めた。


 不気味なその姿にソウルは悪寒が走る。



「まさか……貴様本当に召喚術士だったのか……。黒騎士の戯言ではなかったらしい……」


「黒騎士!?」


 まさか、またあの男が現れたのか?


「貴様が召喚士であるのなら……私はお前を殺す義務がある」


「何意味のわからねぇこと言ってやがる!?俺が一体お前に何をした!?レイだってそうだ!それに……ジェイガン様を……」


「……聖剣騎士団副団長のことか。それも仕方のないこと。奴の罪の清算として必要だったことだ。受け入れなさい」


 あまりに理不尽な物言いに、ソウルは怒りを爆発させる。


「ふざけんな!?過去に何があったかは知らねぇ!だからってこれまで何人の騎士を殺してきた!?そんな勝手が許されるはずが……」



「勝手が許されるはずがないだと?」



 突如、フードの奥の緑の瞳がギラリと殺意の光を放った。


「……っ!?」


 その重圧はまるで鉛の塊を飲み込んだかのようにソウルの胸にズシリと重くのしかかる。


 憎いから殺すなんて、そんな生易しいものじゃない。


 死神から溢れるその怒りと憎しみ。そしてその殺気はこれまでソウルが経験してきたことのないほどの強さだった。



「騎士が……私の故郷にしたこと……。決して敵対などしていない、中立として互いに不干渉の盟約を交わしていた……それを一方的に破棄し、残虐の限りを尽くした貴様ら人間に……騎士に同じ目に合わせて何が悪い!?」



「な、何だよそれ……?」


 彼女の口ぶりから、それが虚言のようには聞こえない。


 まさか、国を守るはずの騎士がそんな残虐な真似をするはずが……。


「国を守るはずの騎士が、そんなことするわけねぇ!ましてやあのジェイガン様がそんな非道な任務を、了承するはずが……」


「どうとでも言え。私は事実だけを述べている。何故なら私の中には証人がいるのだから」


「証人?」


 死神の言葉の意味が理解できないソウルは首を傾げる。



「例え……私があの事件から目を背けようとも!彼らが私に言うのだ!『復讐を!』『憎き人間に裁きを!』とな!!」



 ゴッ!!



 次の瞬間、死神の身体から溢れんばかりのどす黒いマナが溢れ出す。


「な…んだ……?その力は……?」


 そのマナはまるでただのマナじゃない。


 まるで……意志を持ったように死神の身体に取り憑き、やがて何か人の影のような形へと変貌した。


 4人……いや、5人だ。


 どす黒いマナの中には5人の人影と、何か気配を感じる。


 そして、この力の波動。ソウルにはどこか馴染みがあるように感じた。


 いつもソウルと共にある2人と、どこか似たような印象を受けるその力の塊にソウルは言葉を失った。


 ま…さか……?



「ふはは……貴様はまだ召喚術士として未熟だ。冥土の土産に教えてあげよう。召喚術士同士の戦いというものを!!」



 死神を取り巻くマナが地面に収束。それは鷹の様な姿を模した紫電の魔法陣を展開する。



「さぁ、戦場を飛翔する稲妻となれ!【雷獣】のマナ【サンダーバード】!!」

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