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ジェイガンの歴史

 死神の犯行が始まったのはおよそ5年前……。5年前に遡って資料を漁ってみるも、中々それっぽい事件を見つけることができない。


「うーん。この2人は合ってるけど……他は全然違うしなぁ」


「そうですわね。それに5年前ですともうすでにジェイガン様が聖剣騎士団に加入している時期ですし、そうそう大きなこともなさそうですわ」


「でしたら、もっと前の事件に遡ってみましょう。何か見落としがあるかもしれませんし」


 そんな風に相談しながら一心不乱に資料を読み漁る。


 ウルツァイト・ジェイガン。


 今からおよそ40年前、16歳の時に騎士になったらしい。


 新人騎士時代から頭角を現したジェイガンの活躍には目を張るものがあり、その鉄壁の防御と圧倒的パワーで数々の任務をこなしてきたそうだ。


 その後、20歳になった頃にある騎士団の配下騎士、そして2つの騎士団を渡り歩いて、今の聖剣騎士団に落ち着いたらしい。


「……意外ですわね」


 資料を眺めながらアルはボソリとそんな言葉を呟いた。


「意外?」


「はい。ジェイガン様ならずっと1つの騎士団に収まりそうなものですけれど……」


「確かにそうですね。あの真面目で堅気なジェイガン様ですし。しかも1つ目の騎士団は20年は在籍していたそうですよ」


「20年もか……」


 何故ジェイガンはそんなに長く勤めた騎士団を抜けることにしたのだろう?


「何か……そのあたりに鍵となる事件があるかもしれませんね」


「よし、それじゃあ見てみるよ……えっと」


 ソウルは情報が読み込まれた魔石端末を慣れない手で弄る。


 ブゥンと言う音と共に魔石板は光を放ち、様々な文字を浮かび上がらせる。


 この魔石板はイーリスト城にあるデータを溜め込むことができる巨大な魔石にアクセスできるようになっており、あらゆる騎士達の情報や、過去の任務についても調べることができるそうだ。


 かつて、ソウルが入団試験を受けにきた時にオリビアが弄っていたのもこれに近いものなのだろう。


 しかし、中々扱いが難しく、何度も入力を間違えつつも、何とかジェイガンの個人情報を開く。


「……ロックス騎士団で4年配下騎士として活躍。その後20年過ごしたのがタイタニア騎士団。そこからタイタニア騎士団を抜けて神聖騎士団に在籍、か」


「神聖騎士団!?」


 すると、マコが何やら驚いたような表情を浮かべた。


「知ってるのか?」


「は……はい。というより、知らないのですか?神聖騎士団のこと」


「え?」


 何だ?何か凄い騎士団なのか?


「かつてこのイーリスト国の騎士団長を務めた伝説の騎士アレックス様率いる歴代最強とも呼ばれる騎士団です」


「歴代最強!?」


 まさか!?そんな凄い騎士団が存在してたのか!?


「そ、そんな凄い騎士団は今どこにおりますの?」


 そこまで昔の話ではない。せいぜい10年やそこらの話のはず。一体その騎士団はどこに行ってしまったのだろう?


「アレックス騎士団長が殉職されたのです。それで騎士団は解散し、2つに別れたと聞きます。それが今の騎士団長レオン様率いる【神剣騎士団】。そしてジャンヌ様率いる【聖剣騎士団】だったはずです」


「ってことは……」


「ジェイガン様もその時に聖剣騎士団に加わった……つまり聖女となる前からジャンヌ様とジェイガン様は交流があったと言うことになりますわね……」


 元々、神聖騎士団に所属していたジャンヌとジェイガンの2人が主となって【聖剣騎士団】を立ち上げたということか。


「でもまぁ、その時に戦線を退いた者もいたとか何とかです。詳しいことはマコにも分かりませんが……」


 となると……その神聖騎士団が何かキーになるのか?


 いや、でもそれならジャンヌも一緒に所属していたはず。何か思い当たることがあればすぐにピンときそうなものだ。


 と言うことは……。


「じゃあ、ジェイガン様が神聖騎士団に入る前ぐらいの任務を探ってみよう」


「え?でもジェイガン様が神聖騎士団に所属したのは12年前ですわよ?死神の犯行が始まったのは5年前……流石にそんな昔は関係ないのではありません?」


 アルの意見はごもっともだ。


 それでも、ソウルにはずっと引っかかっている違和感があった。


「普通だったらそう考えるけどさ。でも、今回の事件はジェイガン様が明らかにおかしい行動をしてると思わないか?」


「なるほど……!分かりました。マコが探してみます」


 ソウルと意図を理解したマコが再び魔石板に釘付けになる。


「え……と?」


「だからさ。この事件は例えばジェイガン様にとって、特別なものだとしたら……例えばだけど、沢山の人を不幸にしてしまったとか、任務が失敗して犠牲が大きく出たとか。それに耐えかねてこれまで所属していた騎士団を抜けるきっかけになっていたとか……」


 そこまで伝えると、アルはハッとなった。


 20年も同じ騎士団でやってきたジェイガンが突如騎士団を抜ける。きっと、そこには何か特別な事情があった可能性が高い。


 そして例えばそれがジェイガンにとって暗黒の歴史だとしたら?


 そのことを後悔し続けていたとしたら?



 そして、その被害者がジェイガンを始めとした関係者に復讐を誓っていたとしたら?



「私も調べますわ!」


「あぁ!頼む!!」


 そして3人は魔石板を一心不乱に漁りまくる。


 何か、ジェイガンが騎士団を抜けざるを得ない理由があるはず……!


 その一縷の望みにかけて、ソウル達は文字を読み繰り返す。



「っ!ソウル様!見てください!!」



 そして、1番に魔石板を弄っていたマコがとあるページに目を留める。



「これ……鍵がかかっています」



 見ると、そこには厳重にロックがかけられた1つのデータがあった。


 時期にして丁度12年前のデータ。


 これまで見てきた情報の中に、鍵のかけられた物など1つもなかった。明らかにおかしい。


「何だ……?くそ、どうにか開けられねぇのか?」


 きっと、これだ。これが今回の事件の手がかりに違いない!


 マコの魔石板をソウルとアルが食い入るように覗き込む。少し窮屈そうにしつつもマコは魔石板をカタカタ弄る。


「無理です。何かパスワードのような物が必要のようです」


 しかし、マコは悔しそうに唇を噛んだ。


「くそ……」


 資料室のあの男に頼もうにも絶対に教えてくれないだろうし……。


 時間いっぱいまであれこれ試してみたものの、そのデータを開くことはできずに資料室の退館時間となってしまった。

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