ジェイガンの捜査2
次の日、ソウルとアルはジェイガンの事件があった路地裏近くの街の人々に聞き込みを始める。
騒然となる街の人々からはやはり、奇妙な話が多く聞かれた。
事件の夜、ジェイガンが街のいざこざをおさめてまわっていたり、死神を討ち取ると豪語しながら街を歩いていたり……。
聞けば聞くほど普段のジェイガンでは考えられないことばかりだ。
「変ですわよ」
「……だよな」
アルの言葉にソウルも頷く。
「あの、厳格なジェイガン様が街中でご自身の存在をアピールするだなんて……長い付き合いではない私でも変だと思いますわ」
そんなジェイガンの奇行の数々を聞きながら、2人は街を歩く。
何でそんなよく分からない事をしながら街を歩き回っていたんだ?
ジェイガンの狙いは一体何だ?
「まるで、囮ですわね」
「囮?」
すると、アルはうーんとアゴに手を当てながら告げる。
「私、サルヴァンで仲間を救い出すためにわざと敵の目につくようにお酒を飲んで暴れたり、サルヴァンの兵士の悪口を叫び回ったことがあるんですけれど……」
「おい待て。そっちのエピソードもかなり気になるんだが?」
酒を飲んで酒乱の如く暴れ回るアル……。ちょっと見てみたいな。
「そ、それは忘れなさいですわ!私の黒歴史ですもの!」
じゃあ、今度ソウルの意識の中にいるレグルスに聞いてみようか……。
『やめろ!?それを言えば俺がアルに怒られる!?』
ソウルの意識の奥からそんな悲鳴が聞こえたような気がする。
「と、とにかく。今回のジェイガン様はまるでご自身の居場所を街全体に知れ渡るような行動をとっております。それはつまり……」
「……死神に、自身の居場所を知らせるために?」
「そう…考えるのが妥当だと思います」
そう考えると、確かに色々な辻褄が合う。
しかし……。
「でもいくら目立ったところで死神がジェイガン様を狙う理由なんて……」
そこまで言葉にしてソウルはハッとなった。
「えぇ。そういうことですわよ、ソウル」
アルは確信をついたように頷く。
「ジェイガン様も、死神のターゲットの1人だったということになります」
「ま、待てよ!あのジェイガン様が人の恨みを買うようなこと、あるのか?」
あんな厳格だけど、人情に厚いジェイガン様が殺されるほど恨まれるなんて、ソウルには考えにくい。
勘違いか何かではないかと言い返したくなる。
「いえ。1つ可能性があると思います」
しかしそんな事を認めたくないソウルを置いて、アルは言葉を続ける。
「今回、狙われているのは騎士だけ。そしてどんなに人情に厚い方でも、非情にならざるを得ない場合があります。ソウル、あなたにも分かるはずですわ」
「……騎士としての…任務?」
「はい、その通りですわ」
そうだ。国を守るためであれば騎士は戦わなければならない。
当然、そうなれば相手の命を奪う事だってある。
それが騎士としての役目。
いくら国を守るという美談だからと言って、奪った命は返ってこないし恨みが消えるはずもない。
「ということは……」
「えぇ。ジェイガン様の命を奪ったのはあの方の過去の任務と関係のある何者かである可能性が高いですわ」
「っ。」
認めたくない事だが……そう考える事で全ての辻褄が合う。
そうなると、これからソウル達がやらなければならない事が見えてきた。
「じゃあ、俺たちは……」
「はい。ジェイガン様のこれまでの任務をしらみつぶしにあたっていきましょう。その中で今回の犠牲となった方が全員参加する任務があるはずです」
「それを辿れば、死神の目的と次の犠牲者の目星がつくってことか」
何も分からないところから、一気に情報が固まってくる。
それと同時に、考えさせられることもあった。
「一体、ジェイガン様の過去に何があったんだろう……」
しかし、それを答えてくれる者はもういない。