最悪の朝
その日の朝は、いつもの何も変わらなかった。
ジャンヌはいつものように寝床から身体を起こし、服を着替えて聖剣騎士団の部屋に向かう。
そして、扉を開くとそこにはいつものように白髪の大男が「おはようございます」と声を掛けてくる。
はずだった。
「……?」
部屋は暗闇と静寂に包まれ、シンと静まり返っていた。
珍しいな、あのジェイガンがまだ来ていないなんて。いつもなら誰よりも早くここに来て、書類の整理や武器の手入れをしているはずなのに。
そう思いながらジャンヌはそっと定位置である椅子に腰掛ける。
さて、早速死神の捜索に向けて再度調査を……と、昨日放ったらかしのまま整理されていない書類に目を落とした、その時だった。
「じゃ、ジャンヌ様!!」
バンッ!と、勢いよく扉が開け放たれたかと思うと、そこには大きく息を切らしたマリアンヌが立っていた。
「あぁ、マリアンヌ。ちょうどよかった、見回りの成果はいかほど……」
そんなジャンヌの言葉をかき消すようにマリアンヌは叫ぶ。
ジャンヌにとって最悪の報告を。
「ジェイガン様が……ジェイガン様が!!!」
その瞬間。ジャンヌの心に不穏な影が落ちた。
ーーーーーーー
それは突然の出来事だった。
久々に家に帰って眠りこけていたソウルをドンドンドン!とけたたましいノックが襲った。
「うる……せぇな」
時刻にして、朝の8時半ぐらいか。
何だ?何かやったけ、俺?とまだ本調子ではない思考を巡らせながら身体を起こす。
ソウルは部屋着のまま頭をかきつつガチャリと扉を開くと、そこには顔を真っ青にしたマコの姿があった。
「なんだよマコ……もうすぐ支度するから待って……」
「そ…ソウル様……大変でございます」
だが、目の前の彼女はソウルの言葉など耳に入らないぐらい動揺し、ふるふると震えている。
マコがこんなに動揺するなんて、ただごとではない。
事の重大さに気がついたソウルが息を呑んだその時、マコは震える声で告げる。
ソウルと……そしてきっと、ジャンヌにとっての最悪の情報を。
「ジェイガン様が……殉職なされました」




