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ジェイガンvs死神

 ジェイガンは少し涼しげな夜の空気を肺いっぱいに吸い込むと、そっと星空を見上げた。


 あぁ。確かあの日もこんな綺麗な星が空に広がっていたような気がする。


 だが、あの時はそんなもの気にならないほどに心は病み、身体は傷ついていた。


 さて…なるべく多くの人間の目につくようにした。後は奴が来るかどうか……。


 いや、来る。きっと。


 ジェイガンが培ってきた戦いの感がそう告げている。


 いつか、来るかもしれないと覚悟はしていた。だが、実際にその時が来るとなると胸はざわめき、バクバクと自身の鼓動がうるさくて敵わない。


 カツカツカツ……。


 やがて、暗闇の向こうから何者かの足音が響く。


 来たか。


「……貴様、ウルツァイト・ジェイガンだな?」


 投げかけられたのは若い女の声。20歳やそこらだろうか?


「……無論。私が聖剣騎士団副団長ウルツァイト・ジェイガンだ。貴様こそ名乗れ」


 腕を組みながら、威風堂々とした態度でジェイガンは目の前のマントの女に言い放つ。



「貴様などに語る名など……」



 ジェイガンが名乗るや否や、マントの奥から氷のような殺意がビリビリと伝わってくる。


 そしてフードの闇の中から見える深緑色の瞳が怒りの炎で燃え上がっているのが分かった。



「あるものか!!!」


 

 そのまま死神は疾風のようにジェイガンに肉薄し、黄金に輝く刀を振るう。


「ぬぅん!」


 対するジェイガンは刀を横から弾き飛ばし、軌道を逸らした。


 ビュゥン!


 刃は空気を引き裂く。


 すると、続け様に死神はジェイガンの脇腹目掛けて蹴りを放った。


 ズドンッ


「ぐはっ」


 おおよそ女とは思えないほどの威力を放つ一撃にジェイガンは眉をしかめる。


 だが鉄壁の防御を誇るジェイガンの鎧を砕くことはできず、仕返しに正拳突きをお見舞いした。


「せぇぁあ!!」


「……っ!」


 ギィィイン!!


 死神は咄嗟に刀で防御をするも、ジェイガンの怪力にその身は吹き飛ばされまるでおもちゃのように地を転がった。


「く……」


「行きずりの犯行か……はたまた私に特別な恨みでもあるのか分からぬが……このジェイガンをそう易々と殺せると思うな!」


 咆哮しながらジェイガンは死神に突進。


「【地帝】に【拳】のマナ!【プラチナフィスト】!」


 そしてジェイガンの籠手が白く発光し、マナで強化された拳を振り下ろした。


 ズドン!


 死神はその刀でジェイガンの一撃を受け止める。


 あまりの衝撃で死神を中心に地面はボゴリと凹み、クレーターを生み出す。


「まだまだ!【連撃】のマナ!【プラチナガランズ】!!」


 動きを鈍らせる死神に対して続け様にジェイガンは嵐のような連撃を叩き込む。


 ズガガガギィン!!


 しかし、死神も刀を構えながらジェイガンの攻撃をいなしていく。


「ぬぅ……っ」


 拳と刀。


 凄まじい攻防が続き、暗い路地裏に激しい火花が咲く。


 だが、徐々にジェイガンのマナの効果が薄れ連打の速度も下がっていく。


「っ!」


 その隙をついて死神はジェイガンに足払いをかけた。


「しまっ!?」


 完全に体勢を崩されたジェイガンに死神が凶刃を振るう。


「死ね」


 死の刃がジェイガンの胸を貫くかと思ったその瞬間。ジェイガンの鎧が白い光を放つ。


「なめるな!【プラチメイル】!!」


 ズバァァン!!


 そして、路地裏に鮮血が舞った。


「……くっ!?」


 血を流した死神はよろりとジェイガンから距離を取る。


 シュゥゥ……


 ジェイガンには傷一つついておらずその鎧はギラリと光沢を放っていた。


 【プラチメイル】


 その魔法はありとあらゆる攻撃を跳ね返す鉄壁の防御魔法。


 それは物理攻撃だけではない。魔法ですらその力から逃れられず、そのままの衝撃を相手へと反射するジェイガンの得意技かつ最強の魔法だ。


 ジャンヌのエクスカリバーですら破ることのできない防御の前に死神はなす術もない。


「お前の技では我が鉄壁の防御を穿つことはできんよ」


 再び拳を構えたジェイガンは膝をつく死神にそう告げる。



「……ふふっ。ははははは」



 だが、死神はどこか不敵な笑みを浮かべた。


「何がおかしい!?」


 不穏な空気を醸し出すその姿にどこか不気味なものを感じながらジェイガンは言葉を放つ。


「流石は聖剣騎士団副団長様……やはりそこらの雑兵共とは違うか……」


 フラリと立ち上がりながら深緑の瞳がジェイガンを捕捉する。


「やはり…何か目的を持って私を狙うか」


「そう…当然だ」


「ならば答えろ!貴様の狙いはなんだ!?何の意味があって私や騎士達を狙う!?」


 ジェイガンの怒号を無視して死神は言葉を紡ぐ。


「ふ…あなたが強い騎士でよかったよ……だって……」


 そう言って死神はジェイガンの言葉を無視してその手を路地の壁へと押し当てた。



「皆が、直接裁きを下せるのだから……!」



 ブゥン!!



 その瞬間、壁に大きな魔法陣が展開する。


 何だ!?


 ジェイガンの頭には未知の魔法に対する警戒と同時に1つの違和感があった。


 あの魔法陣……どこかで……?


 そんなジェイガンを置いてけぼりにして死神は詠唱を始める。


「さぁ……怒りのままに奴を喰らえ……!【風獣】のマナ!【フェンリル】!!!」

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