酒場にて
「ジェイガン様、どうしたんだろうな」
「うーん。確かに何か様子がおかしかったよね」
聖剣騎士団の部屋を出たあと、いつものようにマルコの酒場に集まったソウル達はマルコの料理を囲みながら先程の会議を振り返る。
「あの規律の教科書みたいなジェイガン様が会議の途中で抜け出すなんて……そんな話初めて聞きました」
普段城の仕事をしているオリビアもジェイガンのことを知っているのか、驚いた様子だ。
それほどまでにジェイガンの生真面目さが知れ渡っていることも少し驚きだが。
「でもあのジェイガン様に限って何かあることもないだろうし、今は僕らのやるべきことについて話しようじゃないか」
「そうですよ。ソウル様達はこれから先、どうするのですか?」
今回はソウルの秘書であるマコにも参加してもらい、今後の動きを把握してもらうことにした。
ちなみに、イーリストで酒が飲めるようになるのは16歳から。まだマコは14歳なのでオレンジジュースを片手に少しいじけたように膨れている。
仕方ないだろ。
「僕らは基本的に夜の見回りと捜索に回ることになる。だからアルとシーナ中心に負担がかかると思うけどよろしくお願いするよ」
「……ん」
「はい。お任せくださいですわ」
シーナはコクリと頷き、アルは小さく敬礼を返す。アルのやる気を表すように今日も彼女の耳がピンピンと元気に揺れていた。
シーナは破壊者の特性上夜目が効くし、アルに関しては夜目だけでなく優れた聴覚も相まって広く夜の街を網羅することができる。
夜の散策にはうってつけなのだ。
「すまねぇな……2人とも」
今回ソウルとレイは2人のサポート的な立場で参加することになる。
正直、2人に負担が偏るのが申し訳ない。
「ソウル、言ったでしょ?もっと私達を信用して?」
「シーナの言う通りですわ。私達だって騎士、あなたと同じ立場なのですわよ?」
「いや、別に信用してないわけじゃないんだけど……」
そう答える2人にガシガシと頭をかく。そうだ、2人だって同等の立場の騎士なんだ。
今回は2人の得意分野だから力を借りる。負担をかけた分はまた別の機会に返していけばいいんだ。
「……ごめん、今のは俺が悪い。頼りにしてる」
そんなソウルの姿にシーナとアルは目を丸くしつつも嬉しそうににっこりと笑い返してくれた。
「任せてください。必ず死神は見つけて見せますわ!」
「……うん。だからもし死神が現れたら一緒に戦ってね」
「おぅ、任せとけ!」
そんな3人のやりとりを見てレイは人知れず笑みをこぼす。
「何だか、本当に立派なチームになってきたじゃないか」
「はい。最初はほんとにどうなることかと思ってましたけど」
チーム発足のころからを知っているオリビアは日を追うごとに絆を深めていくソウル達のことを見ているのが幸せだ。
1つ1つ。こうしてみんなで成長しているのだということが本当によく分かる。
そんな4人のことが大好きで、彼らの歩みをずっと見ていたい。
「……」
オリビアはソウルの首にかかった小さなペンダントに目をやる。かつてオリビアが送ったその品は、きらりと光を反射した。
「ずっと……このままの関係で……」
それがいつか、叶わなくなってしまうのだとしても。




