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プロローグ

 少女は1人、夜の路地裏を歩いていた。


 闇に紛れるような真っ黒なマントに身を包み、音もなく一抹の風のように静かに街を抜けていく。


 そして、しばらくすると何やら男女の口喧嘩のような騒々しい声が聞こえてきた。



「おい!金なら払っただろう!?」


「そ、そんなの聞いていません!いきなりお金を押し付けてきて何をそんな……」


「黙れぇ!いいから大人しく言うことを聞け!!私を誰だと思っている!?」



 見ると、貴族のような中年の男が若い女に詰め寄っていた。


「……ゲスが」


 少女はそう毒づくと、スラリと腰にさした刀を抜く。


 その刃は黄金に輝き、透き通るような輝きを放っている。


 情報通り。目標はここらの路地裏で若い女に詰め寄っては脅迫して辱めていると。


 本当に、貴族という人間は腐っている。その事実に反吐が出そうになりながら目の前のクズに声をかけた。


「貴様。ドラフ公爵で間違い無いな?」


 暗闇から突如浴びせられた氷のような冷たい声にビクリとして男は振り返る。


「な、なななんだお前は!?」


「何者でも無い。ただ聞かれたことだけ答えなさい。貴様はドラフ公爵で間違い無いな?」


 ピリピリと静かな殺気を感じながらドラフは剣を構える。


「そ、そうだとしたら何だというのだ!?」


「……それさえ分かれば」


 そう言って少女のマントがたなびいたかと思った次の瞬間。


 トンッ


「へぁ……?」


 ドラフの首から妙な空気が漏れる。そして、ゴトリという音と共にドラフの首は胴体から斬り落とされた。



「貴様などと交わす言葉など、無い」



 少女の声とフードの奥に光る緑の瞳を最後にドラフの意識は消えた。


ーーーーーーー


「ひっ、ひぃぃ!ひぃぃい!!殺さないで!!!!」


 横たわるドラフの亡骸に釘付けになりながら若い女は泣き崩れる。


「あなたを殺すつもりなどない。怪我はありませんか?」


 そう言って少女は若い女に手を差し伸べた。


 だが、マントの奥から現れたのはドラフの返り血で真っ赤に染まった殺人者の手。


 黒いマントに身を包むその姿はまるで、命を狩るあの存在。


「し…死神……っ」


 そして恐怖のあまり、若い女はカクンと意識を失ってしまった。


「……」


 少女は自身の手を眺めながらスッと立ち上がる。


 そう。私は復讐者。


 例えそれは人を助けたところで変わらない。逃れられない復讐の業火に突き動かされ、この命果てるまで奴らを狩り殺し続ける。


「……ここに留まるのは不味い…か」


 少女がそう告げると足早に路地を駆け出す。


「必ず、皆殺しにして見せる。そして皆の無念を晴らしてみせますから」


 そう言って少女は深い闇夜の中へと姿を消した。

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