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【マリアンヌのお見合い】プロローグ

 シーナが落ち着いた後、結局3人は談話室で一息ついていた。


 夕飯をシーナと一緒に取ることになったのだが、まだそれには少し早い。そこで最近の近況を3人で話すことになったのだ。


「へぇ。じゃあシーナはここ最近ずっとジャンヌ様に稽古つけてもらってたのか」


「うん。街の難しいことは手伝えないから代わりに強くなってみんなの役に立ちたいなって思ってたの」


 そう言ってシーナは紅茶をズズズとすする。


「あぁ。なかなか筋が良くてな。私としても教えがいがあるというものだ」


 ジャンヌも楽しそうに頷きながらティーカップに手を伸ばす。


「へぇ。じゃあシーナがどこまで成長したか、見るのが楽しみだ」


「今から体感させてあげよっか?」


「それは多分俺が死ぬ」


 不穏に光るシーナの眼光に震え上がりながらソウルは答える。


 そんな風に3人で会話に花を咲かせていると、ガチャリと音を立てて談話室の扉が開かれた。


「あ゛〜〜、どうしたもんかなぁ〜」


 見ると、そこには難しい顔をしたマリアンヌがいた。右手にはいつものようにボロ雑巾と化したデュノワールと左手には何やら少し豪華な文書のような物が握られている。


「あれ?マリアンヌさん、どうしたんです?」


 いつもは悩みなどなさそうにハツラツとしているマリアンヌが悩む姿にソウルは首を傾げる。


「お、ソウル。それにジャンヌ様と......シーナ〜っ」


 ポイっ


「.......マリアンヌ、どしたの?」


 ガシャァン


「デュノワールさぁぁん!?」


 マリアンヌはデュノワールをまるでゴミのように投げ捨てると、シーナに抱きついた。


「聞いてくれよ〜。実家から縁談の便りが来てさぁ。ほんっっっと、まだ身を固めるつもりは無いっての!」


 そしてマリアンヌはぐしゃぐしゃに握りつぶした文書をテーブルに投げる。


「縁談......つまりお見合いか?」


「そうなんですよ。全く、私を家のダシに使いやがって」


 そうマリアンヌはぶつくさと文句を垂れ流す。


「えーと.......『フローレンス家』のラザナスさん?」


 ぐしゃぐしゃにされた便りを見てみるとそこにはお見合い相手の名前と、その顔写真が入っていた。


 水色の髪色にロングヘアー。爽やかイケメンと言った風貌の男だ。


「へぇ。でも凄いイケメンですね」


「いや〜。私には無理だわ〜。どうせ私の家の箔が欲しいだけだろうし断ろうと思ってさぁ。でも実家が受けろ受けろってうるさいんだよ」


 そう言ってマリアンヌはため息をつく。


「ははは。だったら断りましょう」


「.......うん。マリアンヌにはデュノワールが.......モガモガ」


「ななななぁにを言ってるのかしらねぇこの娘は!」


 マリアンヌは顔を真っ赤にしながらシーナの口を塞ぐ。


 何だ?何を言おうとしたんだ?


「ふーん。お見合い.......ねぇ」


 すると、いつの間にか目覚めたデュノワールがぐしゃぐしゃになった文書をつまみ上げる。


「あ!ちょっ、見んなよ!!」


 マリアンヌは慌てて文書を取り返そうとするがデュノワールはヒラリと身を躱す。



「馬鹿なやつだなぁ。こーんなガサツな奴を嫁にするなんて.......女を見る目がねぇってもんだぜ」



「「「「っっ!!」」」」



 デュノワールの一言に先程まで和やかだった談話室の空気が凍りつく。


「でゅ、デュノワールさん!訂正してください!!」


 ソウルは慌ててデュノワールに耳打ちする。


「あん?訂正なんかしねーよ。だって、事実なんだからな」


 しかし何にも気づいていないデュノワールはケラケラと笑う。


 気づけって!?マリアンヌさんが!?


 .......ゴゴゴゴゴ。


「ま、待てマリアンヌ。落ち着くんだ」


 慌ててジャンヌがマリアンヌをなだめようと彼女に手を差し出すがもう手遅れだ。


 彼女の導火線に、ばっちりと火がついてしまった。


「.......てやるよ」


「はぁん?」


 プルプルと震えるマリアンヌを脇目にデュノワールはスッとボケた声を上げる。


 メラメラと彼女の怒りが炎のマナとなって溢れ、談話室の温度が見る見ると上がっていく。


 そうだというのにソウルとシーナとジャンヌの背筋は見る見る寒くなっていった。


 やばいやばいやばい!



「だったら受けてやるよ、このお見合いをな!!もうお前なんか知らねぇからな!!デュノワールの.......デュノワールのバカヤロォォォォォ!!!」



「うぎゃぁぁぁぁああああ!!!」



 マリアンヌの拳がデュノワールの頬に叩き込まれる。そしてデュノワールはその勢いのまま窓を突き破って城の外へと叩き出されてしまった。

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