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エレナ

「よぉーし!みな、馬車から降りよ!」


 カスパルが声を上げる。


「こ、腰が.......」


 ソウルとレイは腰を抑えながら立ち上がる。


「あ、あはは.......まさか半日以上ぶっ通しで馬車に乗ることになるとはね.......」


「.......」


 シーナも不機嫌そうに立ち上がる。2人と同じように腰を抑えてはいないが、明らかに腰を痛めたような立ち方をしている。強情なヤツめ。


 この馬車は座り心地が悪かった。それにここにくるまでの道中も揺れが激しくそれが追い討ちとなり体はすでにボロボロだった。


 他の見習いたちも同様に膝をついたり腰に手をやったりしている。


「こらぁ!さっさとこっちまでこんかぁ!」


 ところがこのカスパルという男は全然平気そうに皆に声をかけている。


「ば、バケモノめ.......」


「きさまらが軟弱なのだ!」


 カスパルに聞こえていたらしい。ソウルに目をやりながらやれやれと言った様子で告げる。


「それでは、これからお前たちが護衛する学者たちを紹介する!」


 そう言うと集められた新人騎士たちはグループ毎にテントに連れて行かれる。


「そっか、今回は学者を護衛するのか」


「うん。でも全体の指揮と管理はカスパル様がされるみたい。僕らは言ってしまえば学者さんのお守りみたいなものかな」


 踏破された遺跡とはいえ、ドランクール遺跡は洞窟の中に建造された遺跡だ。崩落や転落などがある可能性がある。そこで腕を振るうのが護衛の騎士というわけだ。


「次は43班だ!」


 カスパルが声をかけてくる。


「よしきた!」


 ソウルは気合を入れる。さぁ、どんな学者が相手なのだろうかと意気揚々とテントへと足を運んだ。


「.......」


「.......」


「.......」


 3人とも言葉を失う。


「なんだよ。お前らが今回の護衛騎士か?」


 相手は10歳といったところの少女だった。短めに切った橙色の髪と元気そうにつり上がった青い目。


「.......えーと、今回の任務って考古学者の護衛.......ですよね?」


 ソウルがカスパルに尋ねる。


「何を言うか。彼女はれっきとした考古学者だぞ?」


 カスパルが心外だな、といった様子で告げる。


「おい、お前今私を侮辱したな!?」


 すると少女は採掘用のハンマーを持ち出してソウルに殴りかかる。


「お、おぉぉお!?」


 ソウルはすんでのところで回避するが、ハンマーの風圧がソウルの鼻をかすめた。


「まぁ、自己紹介といこうではないか」


 カスパルは何も無かったかのように淡々と進める。いや、止めてくれよ!?


「わ、私はエレナ。ここで遺跡調査に参加している考・古・学・者だ!」


 ゼェゼェ息を切らせながらエレナは自己紹介をする。考古学者の所を強調して。


「ぼくはレイ。こっちはソウルでこっちはシーナだよ」


 レイがまとめて自己紹介してくれる。


「ふーん。【ジャガーノート】か」


 エレナはシーナの顔をじっと見る。


「.......」


 対するシーナはエレナを殺気じみた目で睨みかえした。


「.......」


 すると、エレナは泣きそうな顔になっている。


「し、シーナ.......どうどう」


 見てられなかったのでソウルは2人の間に割って入りシーナをなだめた。


「え、エレナも、あまり言ってやらないでくれ。【ジャガーノート】のこと言われるのって気分いい事じゃないんだろ?」


「.......分かったよ」


 エレナ泣きそうな顔で告げる。


「はぁ.......先が思いやられるよ.......」


 ソウルがため息をつく。


「あはは」


 それを眺めながらレイは相変わらずケラケラと笑っているのだった。

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