任務の朝
「いよいよだ」
早朝。ソウルは部屋を出ると伸びをする。
ついにドランクール遺跡へと向かう日が来た。
昨日もマルコの店の仕入れに行こうとしたが「今日は構わないわ。ゆっくり体を休めてなさい」とマルコに言われたのでお言葉に甘えてゆっくり休ませてもらうことにした。体調は万全である。
「いよいよね」
店を出ようとするとマルコが声をかけてくれる。
「あぁ、本当に世話になったよ」
「いいのよ、こっちも助かったし。あとシーナちゃんはもう行ったわよ」
「そっか。相変わらずだなぁ」
ソウルはガシガシと頭をかく。
やれやれ、せっかく同じとこにいるのに何でこうも避けられるかねぇ……。
「ソウルちゃん」
そんなことを考えているとマルコは急に真面目な顔で告げる。
「シーナちゃんのこと、頼むわね」
「え?」
「あの子……このままじゃ危ないわ。壊れてしまうかもしれない。しっかり守ってあげなさい」
「あ、あぁ。はなっからそのつもりだけど」
「きっと、あの子が心を開けるのはあなただけよ。この3日でよく分かった」
「いや、俺蹴られて睨まれて文句言われてただけなんだが……」
初日の覗き騒ぎで顔を合わせる度にゴミを見るような目で睨んでくる彼女の姿を思い出す。
「それでも、よ。こればっかりはね」
マルコは自信満々にウィンクをしながら告げる。
「女の勘よ」
「いや、あんた元は男だろ」
ソウルは今までの真面目な雰囲気が台無しだと思った。
ーーーーーーー
「待たせた!」
ソウルは馬車で待つレイとシーナに声をかける。
「遅かったね」
そんなソウルに対してレイが手を上げて答えてくれる。
「悪い、ちょっとマルコと話してて」
「…………」
ソウルはチラリとシーナの方を見てみる。しかし当のシーナは目を合わせてもくれない。
うーん……シーナが心を開く……か。果たしてそんな日は来るのだろうか?
「よぉーし、全員揃ったな!?」
そんなことを考えていると青の優美な鎧に身を包んだ男が声を上げた。
「私は今回この任務を仕切る、カスパルだ!今回君たちは私の指示に従って動いてもらう!」
そう言ってカスパルは皆を見渡す。
どうやら他にも何グループか見習い騎士がいる様子だ。
「それではこれをもって、たった今から君たちは騎士だ!守るべきもののためにその身と力を捧げよ!それでは行くぞ!」
その掛け声とともに馬車が動き出す。
「緊張するね」
レイは興奮を抑えた声で告げる。
「あぁ」
そうだ、いよいよだ。この11年を超えて、遂に騎士としての初任務だ。
一体この先に何が待ち構えているのだろう?
期待と不安を乗せた馬車は西へ西へと進んでいくのだった。