【ジャンヌ逃避行】ちゃんと休め
「れ...レィイイ.......」
「そ...ソウルうぅぅ.......」
ソウルとレイの2人はフラフラになりながらがっしりと腕を組む。
「「終わったぞぉぉおおおおお!!!」」
【再起の街】復興のための書類整理がようやく終わったのだ。
「いやったぜぇ!れぃぃぃぃい!!」
「いやったぞぉ!そうるぅぅぅう!!」
ゾンビのように目の下を黒く染めたレイとソウルは互いに奇声を発しながら抱き合いテントの中をグルグルと踊るように回っている。
思考能力が停止している2人にとって今周りからどう見られているかなど気にもならない。
「そ...ソウル様.......」
そんな禍々しい光景を秘書であるマコは複雑な表情で見つめるしかなかった。
ーーーーーーー
「おぅおぅ。ようやく終わったか」
何やら騒がしいテントに気がついたマックスがひょっこりと顔を見せる。
「あぁ!ようやくだ!ようやくこの頭が禿げそうな書類の山から解放だァ!」
「こ...これでようやく寝れる.......寝れるぞぉぉおおお!!」
壊れた人形のようにガクガクと笑う2人に恐怖しつつもマックスはなんとか笑顔を作る。
「ま、まぁ何だ。書類の山が片付いたんならちゃんと休んでこい。しばらくは顔出さなくてもいいからよ」
「う...うん.......僕はそうさせてもらうよ.......」
そう言ってレイはフラフラとフラつきながら答える。
「い、いや。みんなが頑張ってるんだから明日も俺は.......」
一方ソウルはフラつきながらも首を横に振った。
「いや、ちゃんと休め。ソウル」
すると、マックスはピシャリとソウルに言いつける。
「領主として、責任を果たそうとするその姿勢はいい。だが、無理は続かん。休息もしっかりととるんだ」
「で、でもジャンヌ様だってあんだけやってんだから俺も.......」
ジャンヌ様だってあれだけ働いているんだ。そうだというのにその配下騎士であるソウルが休むなどできない。
「じゃあソウルよ...お前は【再起の街】の領民に休みなく働けと、そう言うのか?」
マックスはソウルに詰め寄り凄みをきかせてくる。
「そ、そんな訳ないだろ?みんな無理しない範囲で頑張って欲しい。無理して身体を壊したら意味がねぇからな」
「だろう?だったら尚更お前はちゃんと休まなきゃならん」
マックスはぐしゃぐしゃとソウルの頭を掻きむしりながら告げる。
「下のもんは上のもんを見て学ぶんだ。お前が無理をしてでも働こうとするのなら、きっとこの街の連中もお前を見て同じことをするぞ?」
「ぐ.......」
マックスの指摘にソウルはぐうの音も出ない。
確かにソウルもジャンヌがあれだけ頑張っているからやらなければ、といった想いで突き動かされていることも多い。
だからこそマックスの指摘は的確なのだ。
「だから、下のもんのためにも今は休め。いいな?」
「お...おぅ.......でも街のことが.......」
そうなると、街のみんなのことが気になって仕方がない。いや、正直ソウルがいてもあまり大したことはできないのだが.......。
「街のことなら任せてください。ソウル様がいなくても私がちゃんと回してみせますから。ちゃんとゆっくり休んで来てください」
すると、横からマコがじっとソウルを見上げながら告げる。
「あはは、今回はソウルの負けだよ。素直にここはみんなの好意に甘えよう」
レイもそう言ってソウルの肩を叩いた。
「う、うーん.......」
ソウルは頭をがしがしとかき逡巡するが、この3人を説き伏せる気もしないし、ここは大人しく家に帰ることに決めた。




