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【イグの最後】

 遠い昔の記憶。それはイグがイグになった時の記憶。



『ありがとうイグ。あなたのおかげで助かりました』



 イグの脳裏に1人の美しい女性の顔が浮かぶ。


 お前は...誰だ?



『もう。無茶をして.......ダメじゃないですか』



 そう言って女性はイグの頬を撫でる。


 何て暖かく、居心地がいいのだろう。



『.......ずっと、そばに居てくださいね。イグ』



 あぁ....そうか.......我は.......彼女を守る為に.......。



 だが、その願いはあの男によって無惨にも打ち砕かれた。


 【魔法大戦】。我らもその戦いに身を投じた。そして.......。



『.......ごめんなさい、イグ。私はどうやらここまでのようです』



 剣で胸を貫かれた彼女が膝をつく。


 やめろ.......死ぬな!お前がいなければ我の存在意味が無くなる!!逝くな...逝くなあ!!


『どうか...安らかに...眠って.......?それが私の.......最後の命...れい.......で.......』


 そう言って


 死ぬな.......死ぬな!!


「セイリア!!」


 イグは無くしたはずの手を差し出すように地に伏す彼女に身体を伸ばす。



 だが、背後から無情な声が浴びせられる。



『いいぞ、お前は優秀な力を持っているではないか。ならば我に従え、イグ。貴様は我のものだ』



 届かぬ願いを踏みにじるように、【覇王】はイグに【魂縛の鎖】を撃ちこんだ。


ーーーーーーー


 イグの思考がクリアになる。


 そうだ、そうだった。我が本来仕えるべき者は、もうこの世にはいない。


 我も ...支配されていたのだ。王に...主の記憶を塗り替えられて。


「.......我が負けた理由が...分かった気がするぞ。召喚術士」


 ボロボロと肉を焦がしながらイグは語りかけてくる。


「我にも...お前とお前の仲間のような...夢のような時間があった。忘れていたよ、我もそうだったのだと」


 そして、イグは天を仰ぐ。どこかで見ているのだろうか、我が使えた彼女の魂は。きっと、間違いを重ねたこの我のことなど、呆れ果てて見捨ててしまったに違いない。


 でも、最後果てる前に彼女のことを思い出せた。その事実がイグの心をそっと照らしてくれる。


「礼を言う.......召喚術士」


「.......別に、俺は何もしてねえよ」


 ほざけ。お前が思い出させたのだろう?我の中に眠るこの記憶を。


 甘い男だ、どこまでも。ならば、伝えておかなければならないだろう。


「礼として、貴様に1つ教えてやろう」


「何だよ?」


 突然のイグの言葉にソウルは少し警戒しながらも耳を傾ける。



「.......必ず、召喚獣を人間に戻せ。でなければお前達は永遠に後悔することなる」



「な.......?」


 イグの言っていることがよく分からない。


「ど、どういう意味だよ?」


 もちろん、ソウルも最初からそのつもりだ。だが、何故改まってイグはこんな事を言うのか、ソウルには理解できなかった。


「いずれ、気づく時が来る。それまで...せいぜい死ぬんじゃないぞ、召喚術士」


 そう言い残してイグの身体は焼き落ち、やがてその骨もボロボロと崩れ去った。



 セイリア...ようやく我は君の最期の命令を、果たしたよ。また、あの時のように褒めてくれるかい?

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