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【白銀の帰還】

「や、やりました!!ソウル様が...ソウル様がやって下さいました!!!」


 後方でマコの歓喜に満ちた声が聞こえてくる。


「い、いや.......」


 ロッソは目を凝らす。少し距離があって分かりにくいが、あれはイグ本体じゃない!分身.......?いや違う!


「脱皮だ!」


「そんな奥の手隠してやがったのか.......!?」


 イグは【レオ・ストライク】が突き刺さる直前でその皮を脱ぎ、盾にした。傍から見ると一見バステオスがイグの首を破壊したように見えるが、それは奴本体ではなくその皮のみ。


 イグ本体はその隙に顔を引き、魔法を放って隙だらけとなったソウル達に狙いを定めていた。


「多少死にかけたところで構わん」


 そしてイグが口を開くと露わになる毒牙。そこからイグは毒液を放とうとする。


 全てを溶解させるイグの最後の武器。召喚獣を多少溶かした所で【魂縛の鎖】を撃ち込んでしまえばまた我が体内で再生させることができる。


 あの召喚士も溶かし切ってしまう前に何とかすればいい。地獄の苦しみを味あわせた上で水の召喚獣も奪ってやろう。


 ここでやられるぐらいならその方がいい。当たりどころが悪ければあの召喚士は死ぬが、まぁ仕方がない。


「ちぃ!?ソウル!!」


「あのバカ!!肝心なところで油断して!!」


 ライとオデットはソウルを助けようと駆け出すが、間に合わない。


「.......ったく」


 ソウルとバステオスは空中。迫るイグの攻撃を回避する術もない、絶体絶命のピンチ。



 そうだと言うのに、ソウルは笑っていた。



 誰もがソウルとバステオスに釘付けだった。


 だから、ソウル以外誰も気づかなかった。この王の間に吹き抜けた銀の風の存在に。


 地の底から舞い戻った、彼女の存在に。


 全く、心配させやがって。こっちはどれだけ心配してたと思ってる?


 そんな嬉しそうな顔して戻ってきやがって.......。


「何でそんな嬉しそうに笑ってんだよ」


「だって、ソウルが私の事信じてくれたから」


「っ!?」


 イグの背後から聞こえてくる声。それは確かに崖の底へと叩き落としたはずのあの【破壊者(ジャガーノート)】の声。


「言ったでしょ?『信じて』って。ソウルが信じてくれるなら、私はどこまでも強くなれるから」


 そう語る彼女は優しい笑みを浮かべる。


「シーナ!?」


「な、何だあの姿!?」


 そこにいるシーナは優美な羽衣に身を包んでいた。


 【朧村正】の刃と同じ緋色の羽衣。その先端からは炎の残滓のような煌めきが放たれ、見るものの息を飲ませるほどの美しさをみせていた。


「邪魔だ!!」


 イグはシーナに向けて鎖を放つ。空中に舞うシーナもソウルと同じく自由に動く事などできはしないはず。


「そんなの、当たらない」


 だが、そんなイグの攻撃をシーナは軽々と回避する。それはまるで天を駆ける天女のようだった。


「飛んでいる!?何だそれは!?」


「.......【神剣】のマナ。【天野羽衣(あまのはごろも)】」


 シーナに新しく目覚めた【神剣】のマナ。


 その能力は彼女の身を炎の羽衣で包み、飛行能力を与える魔法。


 心の強さが聖剣使いの強さの源。


 私の力の源は...私のことを受け入れてくれたソウルだから。あなたがいてくれるなら、私は.......。


「どこまでも強くなれる!!」


 この想いは誰にも負けない。


『これからシーナが剣を振る意味を見つけることができれば、きっと君はもっと強くなれるはすだ』


 シーナはジャンヌの言葉を思い出す。


『俺は、シーナと一緒にいたいんだ』


『シーナを...信じる』


 かつて、ソウルがシーナにかけてくれた言葉。


 空虚だった私の心を満たしてくれた、私に生きる意味をくれたあの言葉。


 城から投げ出されたあの時、私は自分の剣を振る意味を見つけたんだ。

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