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【リンク・ゼロ】

 ソウルが【絆】のマナをバステオスに送り込む。


 ズズン.......。


 すると、マナを送り込まれたバステオスはまるで力が抜けた人形のようにその場に崩れ落ちた。


「え!?」


「何のつもりだ!?」


 そして。


「ゴオオオオオオオオオオオ!!!!!」


 再びその身を起こし、咆哮を放つ。


「何のつもりかは知らんが。これでくたばれぇ!!!」


 そんなバステオスに鎖が襲いかかる。するとバステオスはソウルとアルを抱え、その場から飛びのいた。


 先程までバステオスが立っていたところにグサグサと鎖が突き刺さる。


「だ、ダメですわ!あれだけ無数の鎖相手ではいずれ追い詰められます!」


 いくら回避に走ったとしても、ここは屋内。いつか追い詰められてしまう。一撃の強いバステオスはその反面手数が足りない。


「あぁ。だから真っ向から行くんだ」


 すると、バステオスはそっとアルを下ろしてそのまま更に距離をとる。


「分かってるな?レグルス」


「グルル.......」


 一定距離をとったソウルはバステオスの肩に飛び乗り、まるで肩車をしているような体勢になった。


「いいか?俺があのふざけた鎖をたたき落とす!だからお前は一点突破だ!あのふざけた蛇をぶち抜くぞ!!」


「ふっ...ふっふっふ.......気でも触れたか?そんなこと出来るはずがないだろう?」


 そんなソウルをイグはバカにするように笑う。


 召喚獣を操作している間は召喚士は無防備になる。


 なぜなら召喚獣を操るという事は言わば【操り人形】を操るのと同じようなもの。そんな状態で迫る無数の鎖を叩き落とすなんて複雑なことができるはずがないのだ。



「そう思うのなら、試してみろよ」



 そう言ってソウルは黒剣を構える。その目は本気だった。


 多少召喚獣を操れるようになったから調子に乗っているのだろう。だったら現実を教えてやる。


「だったらやって見せるがいい!!【鎖縛・嵐】!!」


 無数の鎖がまたソウル達に降り注ぐ。それを確認したバステオスは力強く床を蹴り、イグに向かって駆け出した。


「あああぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


 そしてソウルは咆哮しながらバステオスの首筋を貫かんとする鎖の嵐を弾き飛ばしていく。


 最初の2撃は左右に弾いて回避。ソウルの背後に迫る鎖は剣で受け流し別の鎖とぶつける。その際に少し体勢が崩れるも、また前方からくる鎖を剣ではたき落としながらバステオスの肩に捕まる。


 ほぅ、確かにあれだけの鎖を弾くその動体視力と剣の腕は認めてやろう。だが、そんな激しい動きをしながら召喚獣を操ることなどできはしない。所詮時間の問題。


 そう思っていた。


 だが、イグの予想に反しソウルは次々と鎖を弾き飛ばしてイグに向かって迫ってくる。


 処理が間に合わなくなるどころかどんどんソウルの動きにキレが増していき、バステオスもそれに応えるように俊敏な動きで鎖をかわしながら突っ込んでくる。


「何!?」


 バカな!?何故あれだけ剣を振りながらあそこまで召喚獣を操ることができる!?


 イグは目の前で起こるその現実を受け入れられない。


「そ、ソウルに何があったか分からないけど、召喚獣をあれだけ操りながら戦えるなら、もう弱点なんかないじゃないか!いいぞ!いけいけ!!」


「あまり調子に乗らないでくださいよ、ロッソ!」


 ポセイディアの回復魔法で元気になったロッソはそう言いながらエールを送る。


「いや...いくらなんでもいきなりあんな事出来るようになるもんか?」


 そんなロッソに対し、ギドはいぶかしげにソウルを見ていた。何がどうなればいきなりあんな芸当ができるのか。


 多くの者が首を傾げる中、1人だけその答えに気がついた者がいた。


「あれ...あの時と同じですわ.......」


 アルが語るあの時。それは、サルヴァンで城の抜け道を使った際にソウルとレグルスが見せた共闘。


 2人で肩車のように構えながらソウルが攻撃を防ぎ、レグルスが駆け抜けたあの時だ。


「あれ...ソウルが召喚獣を操ってない.......?」


 【リンク・ゼロ】。


 新たなその魔法はソウルと召喚獣のマナの繋がりを一時的にシャットアウトする魔法。


 簡単に言えばソウルが召喚獣の手綱を完全に放棄する魔法だ。


 ソウルが召喚獣を操作しなくても、召喚獣が彼ら自身の意思で行動してくれる。だからソウルは召喚獣を出した状態でも戦いに専念できるというわけだ。


 そして召喚獣の意思とは召喚獣になった者の意思。つまり今ソウルはレグルスと共に戦っている。


 サルヴァン城の抜け道の時のように、一心同体となってイグの鎖をかわしながらイグへと肉薄する。


「ぐ...おおおぉ!?!?」


「いけぇ!!レグルス!!!」


 もうイグが目と鼻の先。ソウルは【リンク・ゼロ】を解除し、レグルスにマナを送り込む。


 込めるマナはバステオスの固有デバイス【炎獅子】に【(スフィア)】のマナ。


 バステオスの拳が激しく燃え上がる。そしてそれに呼応し、バステオスの前方に小さな炎の恒星を発現させた。


 レグルスの必殺技だった、あの魔法の進化技。



「【レオ・ストライク】!」



 そしてバステオスはその恒星に燃え上がる拳を叩き込んだ。


 ボッ!!


 バステオスの拳を受けた恒星は超速で撃ち出される。その最中、火球は徐々に獅子の頭へと形を変えた。


「ぐ...おおおおおおおおおおお!!!!」


 イグは今放てる鎖を全投入して獅子の頭を撃ち落とそうとする。だが、圧倒的な熱量を誇るそれは鎖をボロボロと溶解させ、イグへと襲いかかる。


「くそ...くそおおおおおおおおおおおおお!?!?」


 そして炎の獅子はイグの顔に突き刺さり、それを破壊した。

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