買い出し
「いてて……」
「もう、ほんとにあなたって人は」
オリビアは不機嫌になりながらもソウルの頬に湿布を貼ってくれる。
結局朝までのびていたソウルはマルコの店にやってきたオリビアから治療を受けていた。
「私がいるからって馬鹿なことばっかりしてません?」
ジト目で見ながらオリビアは毒を吐く。
「好きで痛い思いなんかしねぇよ……」
ソウルはガックリ項垂れながら告げる。
「今回は、魔法を使ってあげませんからね!」
「は、はい……」
「ソウルちゃんも男の子だものねぇ」
マルコもやれやれといった感じで肩を竦めた。
「いや、別にシーナの裸を見たかった訳では……って、いてててて!?」
オリビアに頬をつねられる。
「あら、もしかしてあたしを覗きに来てくれたの!?もーう、素直に言えばいくらでも見せてあげ」
「ざけんな」
「ひどいっ」
なんてやりとりをしながらソウルはオリビアに本題の話を切り出した。
ーーーーーーー
「買い出しですか?」
「うん、マルコの店の仕入れをやって欲しいって頼まれててさ」
ソウルはマルコに目をやりながら説明する。
「それをやってくれたら任務までの間はここで泊まってっていいわよ」
どういうつもりかは分からないが、まぁそんな事で部屋を貸してくれるのならありがたいことだ。
「ってことなんだ。だからシーナも起こして……」
「いいえ、行くのはあなただけでいいわ。ソウルちゃんこの街に来て日が浅いでしょ?だからオリビアに案内してもらいなさい」
「ちょ!?マルコさん!?」
オリビアは顔を真っ赤にして焦っている。
そうだよな。いきなりこんな面倒ごと頼まれたらそんな反応になるよな。
「すまん、オリビア。でもそこを何とかお願いできないか?正直この街のどこに何があるかさっぱり分からねえんだ。だから案内してもらえるのなら凄いありがたいんだよ!」
そう言ってソウルは頭を下げる。
ソウルにとってこの広大な城下町は未開の地も同然。何の案内もなく飛び込めば右も左も分からないどころか、ここに帰ってくることすら叶わないかもしれない。
実際、入団試験場に行くのはいかにも騎士そうな男についていっただけだったし。
「い、いや別に嫌ってわけじゃないんです!」
オリビアは慌てて手を振る。
「じゃあ、決まりね。ついでにソウルちゃんも任務に必要なものを買いに行ってきなさいな。夕方頃に戻ってくれればいいから、ゆっくり回って来るといいわ」
「それは助かる。マントも消し炭になっちまったし、新しいの新調しないとと思ってたんだ」
ソウルは【トルネード】で飛散した#相棒__マント__#のことを思い出しながら遠くを見つめる。
「そ、それじゃあ決まりですね!準備してくるので30分ほどしたら表の広場で待っててください!」
そう言ってオリビアはバタバタと店を出ていった。
「?このまま一緒に行けば良かったんじゃ……」
「あのね、乙女には準備が必要なの。そんなこと思っても本人の前で言っちゃダメよ?」
ソウルはマルコに釘を刺されるのだった。
ーーーーーーー
トントン
ソウルは少し時間ができたのでシーナの部屋をノックする。
「シーナ?」
返事はない。仕方がないので、はぁとため息をつきながら言葉を続けた。
「昨日はごめん、わざとじゃなかったんだ。これからは気をつけるから……やな思いさせて悪かった」
相変わらず反応がない。寝ているのかもしれないが、昨日の覗きをしてしまった引け目もある。部屋を開けるのは気が引けた。
それでも、彼女に伝えておきたいことがあった。
「シーナ……昨日はありがとうな。付いてきてくれて、嬉しかった。マルコさんも任務当日までいていいって言ってくれたから、ゆっくりしとけよ?俺はちょっと出てくるから」
聞こえているか分からないが、どうしても伝えたかった事だけを言い残してソウルは階段を降りた。
ーーーーーーー
「……」
カーテンが締め切られた薄暗い部屋の中。シーナは布団の中でくるまっていた。
「……なんなの、あいつ」
【破壊者】の私に謝ったり、お礼を言ったり……。しかも蹴り飛ばした張本人なのに。
「……ほんと、分かんない」
そう言うシーナの目からは一筋の涙が溢れていた。




