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イグとの戦い6【サトリ】

 時は少し遡る。


 ギドとイグが戦闘を開始した。そんな中マコはぐるぐると思考を巡らせる。


「ソウル様.......ソウル様!起きて、起きてください!!」


 マコはソウルに呼びかけるがソウルはピクリとも動かない。


 過去にも見た事がある。イグ様の精神の綱引きに負けた者は精神が破壊される。きっと、ソウル様も.......。


 いや、ソウル様ならきっと目覚めてくれるはず.......。その微かな希望にかけるしかない。


 ならば、どうすれば...どうすればいい!?


 ギドはイグと同等の戦いを繰り広げているが、このままでは負ける。当然ギドが負ければマコだけではなくソウル様だって殺されてしまう。それだけは避けなければならない。


 何か...何かをやらなければ!


 マコは頭でさまざまな可能性を探る。そして、1つの事を思い出した。



 ギドは、援軍をよこすために手がかりを残していた。



 そして、10信徒達は何者かにやられ、イグに助けを求めに来た。



 ならば、もうこの城のどこかにギドとソウル様の仲間がいるのではないか?彼らをここに呼ぶことができれば、まだ勝つ可能性が残されているのではないか?


「っ!」


 マコはソウルを担ぎながら走り出した。だが、どこを?どこを探せばいい!?


 この大きな城の中を探し回るなんて、無謀だ。イグのように敵を探知する力があるわけでもない。


 せめて...せめて【サトリ】の読心術が残っていれば城の中の人間の思考を拾い、彼らの仲間を見つけることができただろうに。


 イグから奪われた魔獣の力がここで必要になるだなんて。皮肉だった。


「お願いです.......お願いします.......どうか...どうか.......!!」


 マコはただ祈りながら暗い城の中を駆け回るしかない。早くしなければ、ギドも死んでしまう!そうなったら城の中にいる私とソウル様もすぐに殺されてしまうだろう。


「頼みます...この世の中に.......本当に神様がいるのなら.......!!」


 マコは己の無力さに泣きじゃくりながら告げる。


「どうか...どうか.......私に力を貸してください!!何でもします...!必要ならばこの身も差し出します!だから...どうか.......どうか.......ソウル様を助ける力を.......私に.......!!」


 その時だ。


『うふふ』


「っ!?」


 マコの心の中に何者かが語りかけてきた。


『やっと...人としての一歩を踏み出せましたね、マコ』


「だ...誰です!?」


 マコは辺りを見渡しながら謎の声に問いかけた。


『酷いですね。この半年、ずっと共にあったではありませんか』


 その言葉にマコはハッとする。


「ま...さか.......【サトリ】.......?」


 そんなまさか!?これまで【サトリ】が語りかけてくるなんて一度もなかった。しかも、もうマコの額にはコアはない。もう【サトリ】の力はないのだ。


『えぇ。私はあなたから引き剥がされました。だから、ここにいるのはあなたに残った力の残滓です』


 優しい声色で【サトリ】は続ける。


『私は、心配だったのですよ。未来に何の希望も持てないあなたの事が.......だから、私はあなたを受け入れた』


 人を襲うことなどなく、ただひっそりと暮らしていた所をイグによって捕らえられ、力を奪われ、ついにはその身を小さな結晶体に変えられてしまった。


 そして、その次には望みもしない人間の中へと埋め込まれそうになる地獄が始まった。


 その誰もが生きる事に意味を見出せずに、全てを何かのせいにして逃げ回る哀れな生き物だった。


 そんな日々の中出会ったその少女は綺麗だった。


 優しい心を持った少女。だが、その心は深く傷つき、今にも壊れてしまいそうだった。愛を忘れたその少女の姿に【サトリ】は涙した。


 せめて、私だけでも彼女を受け止めよう。そして見守っていこう。そう決めた。


 そんな彼女がついに、自分の足で立ち上がった。自分の意思で生きていく事を決意した。だから、私は彼女の背中を押そうと決めた。


 きっと、もうこれが最後になるだろうということは分かっていた。それでも...私はこの子の未来を望む。


『私の最後の力です、マコ。あなたの未来に溢れんばかりの希望がありますよう.......』


「ま、待ってください!私は...私は.......!!」


『何も言わなくていいですよ、マコ。私は【サトリ】、あなたの思っていることは全て分かっていますから.......ありがとう。あなたに出会えて、よかった』


「【サトリ】....【サトリ】ー!!!」


 そして、【サトリ】の声は聞こえなくなった。同時に脳裏に響くいくつもの声。


『こっちかな...?真っ暗でよく分からない』


『でも、それは相手も同じことですわ。油断せずに行きましょう』


 教徒とは違うその心の声を、マコは確かに聞いた。


「.......ありがとう、【サトリ】。必ず私はあなたの分も立派に生きて、生き抜いていきます!!」


 そう叫びながらマコは走り出す。


 初めて聞いた【サトリ】の声は、優しい女性の声だった。まるで本物の人間のような声。


「.......まさか、本当に人間だったのでしょうか?」


 1人でそう呟きながらマコは心の声の指し示すほうへと走った。

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