廃都の戦い2
レイはガーゴイルと打ち合いながら周りに意識を配っていた。どうやらアルがあの巨大な兎に為す術が無い様子だ。
「モニカ、アルがピンチだ!ここを任せられるかい!?」
後方で構えるモニカにレイは指示を飛ばす。
「任せてください!【弾機】のマナ!【スプリング】!!」
レイの指示を受けたモニカが詠唱すると、皮鞄から黒い衣服を見にまとった長身の人形が姿を現した。
その手足はバネとなっており、重力でゆらりゆらりと揺れている。それらの先には鋼鉄で作られた爪とブーツがギラリと不気味に輝いていた。
『やれやれ。相変わらずモニカちゃんは人形使いが荒いねぇ。そんなんだからまだロベルトとイザベルと協力できないんだぜ?』
久々に現れたスプリングがモニカの心に語りかけてくる。
「必ず2人とも打ち解けて見せます。その為にも今は力を貸してください、頼りにしていますよ」
そう言ってモニカはスプリングに微笑みかけた。
『やれやれ。愛しのモニカちゃんにそう言われちゃあ断れねぇなぁ』
すると、スプリングはしゃがみ込み、グググと足のバネに力を込める。
「【跳躍】!」
そしてスプリングの縮み込んだバネが解放されると、弾丸のようにガーゴイルへと突っ込んだ。
「グゴオオオオオ!!?」
スプリングはガーゴイルの首に自身の腕を絡み付けるとそのままガーゴイルをレイから引き剥がし、地に転がした。
「さぁ、行ってくださいレイさん!」
「助かるよモニカ!あと、君もありがとう!!」
レイはそう言ってアルの元へと駆けていく。
『へぇ。俺の事が分かるのか。面白い人間だなぁ』
スプリングは走っていくレイを眺めながら呟く。
「グオオオオオ!!」
『おっと、いけねぇ』
ガーゴイルの攻撃をスプリングは跳躍して回避。そのまま華麗に地面へと着地した。
『ほいじゃあ、いい感じにやる気も出てきたことだし、とっとと殺るぜ、モニカちゃん!』
「頼みますよ!【跳躍】!!」
再びスプリングは弾丸となってガーゴイルに飛びかかる。対するガーゴイルは自身にマナを纏わせた。
ガギィィィン!!
『硬いな。硬質化したのか?』
スプリングの鋼鉄の爪がガーゴイルに襲いかかるがその体皮が石像のように硬くなり攻撃が通らない。
「グルルルルル」
更にガーゴイルにマナが集約。そして硬質化した体皮が弾け飛ぶ。
パァァン!!
弾けた体皮の欠片はまるでショットガンのようにスプリングへと襲いかかる。
『くぁ!?』
スプリングはその勢いに堪らず吹き飛ばされる。それを見たガーゴイルの10信徒はニヤリとする。
「さらに追い打ちをかけてやれ!!ガーゴイル!!」
そしてガーゴイルは態勢を崩したスプリングに飛びかかるとそのまま馬乗りとなり、拳を振り下ろす。
ドドドドドド!!
『く、そ!?やってくれるじゃねぇか!この野郎が!?』
スプリングはなされるがままにガーゴイルの拳を身体で受け止める。
「ひゃはははははは!!終わりだぁ!!」
ガーゴイルの拳にマナが篭る。【拳】のマナ、【鉄拳】。
スプリングの身体に鉄の硬度まで硬くなった拳が振り下ろされようとしたその時だった。
「.......ん?」
この人形の右手はどこに行った?
『おいおい。あまり調子に乗りなさんなよ?』
見ると、その右手のバネは大きく伸び、今まさにこちらに向かって超速で引き戻されている所だった。
「グゴオ!?」
「気づいたところで.......」
『もう遅いって話だわなぁ!!』
ズパァァン!!
そして次の瞬間、その勢いのままスプリングの爪がガーゴイルの身体を真っ二つに引き裂いた。




