モニカの過去4【地下の住人】
作業小屋の地下。
暗闇に包まれたその部屋にはまるで牢屋のように5つの鉄格子がはめられている。
大小様々な鉄格子の中で、1番小さな鉄格子は内側から破られたように破壊されていた。
古い地下牢のようなのだが、歪なのはその牢の中には人間ではなく、人形が安置されていること。
それらの人形達は不気味な雰囲気を醸し出しながら牢の外を見つめている。
そして右手前に安置された赤い衣に身を纏い能面を被った人形がまるで生きているかのように牢屋の中から6体の小さな人形達に呼びかけた。
『いい加減、あの娘と共に過ごすのはやめるのじゃ』
しかし、小さな兵隊たちは首を横に振る。
『よいか?あの娘は人間なのだぞ』
それでも尚、能面の人形は語り続ける。
『あの娘には、あの娘の生きる世界がある。それはわらわ達とは違うのじゃ。お前達ががあの娘と関わること……それはあの娘の足かせとなるのだぞ』
それを聞いた兵隊達は仲良く俯きながら動きを止める。
『言うてやるなよ、巴よ』
すると、今度は左奥の牢屋から銀色の鳥のような仮面をつけ、黒い衣服を身に纏った細長い操り人形が諭すように話し始めた。
『そやつらはまだまだ未熟な子どもなんだぜ?まだ人間に希望を持ってる、痛い目を見ないと理解なんぞできんのさ』
『黙らぬかスプリング』
『おぉ怖い怖い。そう言えばお前さんも一時期は人間に希望を抱いておる時期があったな。自分と重ねてんのかい?』
『このっ.......』
『止めなよ、騒々しい』
そんな2人の言い争いを見てスプリングの向かい側の牢から若い青年のような声が響く。
『好きにさせてやればいいじゃないか。何をやろうとそんなの自己責任。だから静かにしてくれない?』
『ロベルト.......お前さんって奴はよぉ』
スプリングと呼ばれた操り人形は呆れたようなため息をつく。
『うふふふふ.......』
その時だった。1番奥に安置された人形が不気味に笑い始めた。
『だったら、その娘をここに連れてきなさいな。この私が直接見定めてあげるわ』
『抜かせ、イザベルよ!お前はただあの娘を取り殺したいだけじゃろう!?』
『そうだねぇ。お前にだけは会わせらんねぇな』
『僕も、そう思うよ』
今まで無干渉だったある人形の言葉に、バラバラだった人形達の意見が初めて一致した。
『ふふふ。みんなで寄ってたかって意地悪ね。意地悪しちゃいけないって、ママに教えてもらわなかったのかしら?』
そう言って、彼女はどす黒いオーラを放つ。
ここに封印された人形の中でも明らかに異質なその人形イザベル。
容姿は金髪で雪のように真っ白な綺麗な肌。
瞳は空のように透き通った青をしているが、それはどこか虚ろで、服装は黒と白を基調にしたワンピースを身につけている。
身長は150cmほどだろうか。
『でも、そのモニカちゃん、会ってお友達になりたいわ。うふふふふ』
暗闇の中、不気味な笑い声が響き渡った。




