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迷っていますね

 喫茶店を出た後もソウルはまだどこか上の空だった。


「やれやれ、意外と生真面目なやつだな」


「.......ソウルらしいや」


 そんなソウルをよそに他の3人は楽しそうに話をしている。


「.......」


 これからの事。


 ソウルは、何とかして召喚獣になった2人を解放したい。あわよくば、元の人間に戻してやりたい。


 だが、あのスカーハ婆さんですらその方法を知らないのだ。正直完全に八方塞がりだった。


 それに今ソウルは聖剣騎士団の配下騎士である。


 今は休暇を貰っているから戦闘の機会はないが、ずっとこのままでもいられない。聖剣騎士団初の配下騎士がいつまでも何もしないままではその上の聖剣騎士団にも迷惑がかかるだろう。


 なるべく早く答えを出さないといけない。正直かなり焦っていた。


 せめて何か手がかりが欲しい。


「.......あ」


 なんて考えていると、前を歩く3人に随分と置いていかれてしまっている。


 やれやれ逸れるわけにはいかないか、と少し駆け足で3人を追いかけようとした、その時だった。



「あなた、悩んでいますね」



「.......は?」



 背後から突然声をかけられた。


 振り返ると、そこには白装束のような真っ白な服を着た華奢な女が立っていた。顔は龍の顔のような絵が描かれた布で隠されており、表情はよく分からない。


 声の感じ的に歳は20代ぐらいだろうか?


「救いが欲しくありませんか?」


「.......」


 正直、引いた。どう考えても怪しすぎる。明らかに何かの宗教の勧誘だろう。


 悪いけど面倒ごとはごめんだと思いながら、ソウルは女を無視して走り出そうとした。


「あなた、召喚魔法のことで悩んでいるでしょう?」


「.......え」


 ソウルの足が止まる。


 こいつ、何で召喚魔法のことを知っている?


「私の教祖様は何でもお見通しでございます」


「.......っ」


 何だ、この女.......?


「私の教祖様なら、何でも知っておりますよ。あなたが喉から手が出るほど知りたい、『召喚獣を解放する方法』もご存知かと」


「なん...だと.......?」


 召喚獣を、解放する方法を.......?


「お会いになりますか?私の教祖様に」


「.......」


 布の向こうからこちらを伺うように女は告げる。


「ダメ、ソウル」


 すると、異変に気がついたシーナが駆けてきた。ギドとロッソもそれ続く。


「おいおい、また変な奴にから...まれて.......」


「ギド?」


 するとギドは女の姿を確認するや否や表情が固まった。隣にいたロッソだけがそれに気がつく。


「.......すまねぇ、シーナ」


 ソウルはぐっと手を握る。


「.......もう、八方塞がりなんだ。正直胡散臭いけど、行ってみるしか」


「でも!そんな奴絶対怪しいよ!その、服もよく分かんないし.......」


「この衣は我らがイグ様を崇拝するものの証です」


 女は自らの服を誇るように告げた。どうやら女はそのイグと呼ばれる存在に心酔しているらしい。


「別に、あんたの信じるものをとやかく言うつもりは無いよ。でも、本当に召喚獣を解放する方法を知ってるってんなら.......」


 ソウルは迷いを振り切るように首を振る。


「少しでも可能性があるのなら、俺はそのイグってのに会ってみたい」


「.......ふふ」


 ソウルの答えに目の前の女は怪しげに笑う。


 正直、藁にもすがる想いだった。果たして本当に召喚魔法のことを知っているのか。俺を勧誘するための罠なのではないか?


 さまざまな疑念が脳裏をよぎるが、それでも目の前に示された可能性に、ソウルは抗うことができなかった。


「ダメ!絶対に行かせない!」


 そんなソウルの腕をシーナは掴む。


「やめてくれ、シーナ」


「やめない。どうしても行くって言うのなら.......」


 シーナはソウルの顔を見上げて告げる。


「私も一緒に行く」


「はぁ!?」


 予想外の提案にソウルは驚愕した。

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