レオン襲来
「ぬぅ~っ!!」
王の間を後にしたレオンは早足に神剣騎士団の談話室を目指す。
魔導学校から優秀な者を引き出し、聖剣騎士団に優秀な新兵を送らせないようにしたというのに、これではまるで意味がないではないか。
まさか一般からの志願兵の中にそれほど筋のある者がいたとは.......!
だが、やはり一般志願で来ただけはある。その噂の43班はどいつも訳ありのようだ。
どこの誰とも分からない流れ者に、ジャガーノートの娘と獣人の娘。そしてあろう事か魔導霊祭で魔法が使えないと言われた男.......。
何か、必ず裏があるに違いない。
「私自らその43班を見定めてやる必要があるな!」
レオンは1人でしゃべりながら歩を進めていく。
そうと決まれば後はそれをする場を設ければいい。さてどうしたものか.......。
「あの、レオン様」
そんなことを考えているレオンにオデットが背中から声をかけてきた。
「その43班とやらに、私達も会わせていただくことはできないでしょうか?」
「.......ほぅ」
レオンはオデットからの意外な提案に一瞬驚く。
「私達も、彼らがどのような者か興味があります」
後ろのライも黙ったまま頷いている。
そんな2人を見てレオンの頭に名案が浮かぶ。
そうか、その手があったか!
「よかろう、ならばこうしようではないか!」
レオンは1つ頷くと踵を返し、聖剣騎士団の部屋へと向かった。
ーーーーーーー
「.......ん?」
ジャンヌはシーナと汗を流した後、再び書類処理を行なっていた。そんな中、何やら背筋に悪寒が……嫌な予感がする。
「久しいな!ウェルリアム・ジャンヌよ!!」
その瞬間、バァンと激しい音を立てて扉が開け放たれる。顔を上げるとそこにはイーリスト国騎士団長、レオンの姿があった。
「.......」
ジャンヌは頭を抱える。まさか、直接この男がやってくるとは。
「いきなり約束もせずにジャンヌ様を尋ねるなど、不敬極まりない。恥を知れ、レオン!」
ジェイガンはギロリとレオンを睨む。しかし当のレオン本人は一切気にも留めない様子で続ける。
「いやぁ、ジェイガン殿。この度は新たに配下騎士を雇ったそうじゃないか!あれ程までに配下騎士を拒んでいた聖女様が、どういった心境の変化なのかを聞きたくてな!」
「黙れ!貴様が国王様にくだらない事を進言したからだろう!?」
「ジェイガン、よせ」
苛立ちを隠せないジェイガンをジャンヌは制止する。
「.......はっ。申し訳ございません」
「.......で?北から戻ってきてただの小言を言いきた訳ではあるまい。何の用だ?」
ジャンヌはレオンを睨みながら問いかけた。その圧倒的な迫力にレオンは思わず肩を震わせる。
「ふっふっふ。我々が配下騎士を雇う理由がわかるか?ジャンヌよ」
すると、レオンは話の核心を逸らすように話を始めた。
「.......知れた事だ。下の者を育て、より多くの民を導き守るためだ」
ジャンヌもレオンの腹を探るように話を進めていく。
「その通り。だが、君の雇った配下騎士は何だ?どこの誰とも分からない流れ者やジャガーノート。本当に我が国の未来を担うに足る人材か?」
「あぁ。それについては間違いないさ。今の上級騎士を探しても彼らほど真っ直ぐで素晴らしい人材はそういない。彼らは私の自慢だ」
ジャンヌはソウル達を配下騎士にしたことを誇るように答えた。
「ふむ。しかし君がそう思っていても周りはそうは思わないのではないか?」
「.......何が言いたい?」
「ジャンヌよ。そこまで貴様が素晴らしい言うのであれば一度私の配下騎士と立ち合わせてみてはどうだ?」
「何?」
「お前がそこまで認める優秀な騎士であれば私も会ってみたい。それに、私も新しく配下騎士を迎えていてな。お互い良い刺激となるのではないかと思うのだ」
「それは.......まぁ確かにそうかもしれないな」
他の新人騎士達との交流。
ただでさえ彼らは浮いていると聞いている。ならばここでそういった横のつながりを持たせてやることも必要か。
「そうだろう。君も下の者を育てるのも我らの仕事も言った手前、断ることはしないよな?」
レオンはジャンヌにどうだと言わんばかりに告げる。あぁ、確かにこの流れでは断ることはできないか。
「.......いいだろう」
正直、レオンの腹の内が読めないが仕方ない。それに別に特別悪い話ではない。
「では明日また同じ時刻にここに来る。君の配下騎士も呼んでおいてくれよ!」
「何!?明日だと!?」
待て、流石に急すぎるだろう!?
「では楽しみにしているぞ!はーっはっはっは!」
レオンはそのままジャンヌに何も言わせぬ内に部屋を出ていってしまった。
「.......」
「だ、大丈夫ですか?ジャンヌ様」
ジャンヌは頭を抱える。相変わらず常識のない男だ。
「.......とりあえず、ソウル達には私から伝えておきましょう」
「.......すまないな、ジェイガン」
ジャンヌは憂鬱な気持ちを抱えながらぐったりと椅子にもたれかかるのだった。




