ソウルの不調
「聖剣騎士団の配下騎士!?」
夜、シーナから呼び出しがあり43班はマルコの店に集まる。
「.......うん。ジャンヌ様がならないかって」
「そ、それは.......凄いことなんですの?聖剣騎士団ともあろう騎士団なら部下などたくさんおりそうなものですけれど」
アルは首を傾げる。
「普通の騎士なら.......ね。でも聖剣騎士団はこれまで一度も配下騎士を雇ったことがないんだよ」
「え...」
アルはことの重大さに気がついたようだ。
これまで1度も配下騎士を雇ったことのない聖剣騎士団が、初めて配下騎士を雇う。それも新参者の見習い騎士団を。
「これまで以上にややこしいことになりそうですね.......」
隣で聞いているオリビアも苦笑いする。
「うーん...でも、どうして僕達なんだろう?」
「.......信頼してるんだって。聖剣騎士団のメンバーも皆OKしてるって言ってた」
シーナはジャンヌから聞いたままを伝える。
サルヴァンでの一件が強く好印象だったのだろう。正直、43班のみんなからしても聖剣騎士団は雲の上の最強騎士団というよりは、優しい先輩たちといった印象になっている。
「嬉しい提案だけど.......少し動きにくくなるかもしれないね」
レイはうーんと唸りながら呟く。
「動きにくくですか?」
「うん。これまでシーナの聖剣だったりソウルの召喚獣だったり、隠してやってこれたのは僕らがまだ新兵でそこまで周りの目がなかったところが大きい」
「じゃあ、配下騎士になれば.......」
「うん。ジャンヌ様と行動を共にするから、きっとこれまで以上に周りの目が厳しくなる」
「そうねぇ。正直、ソウルちゃんといいシーナちゃんといい、これまで明るみにでてないのは奇跡に近いわよ?」
「.......た、確かに」
そうだ。正直いつばれてもおかしくないぐらいにはソウルもシーナも魔法を使ってきている気はせでもない。
「.......」
すると、話を振られたはずのソウルが黙り込んでいることに気がつく。
「ソウルさん?」
「.......」
「ソウルさーん」
「.......あ...どした?」
「「「「「.......」」」」」
魂が抜けたようにどんよりしているソウルの姿に一同は言葉を失う。
「どうしたんですの?ソウル」
「どうしたって.......別になんでもねぇよ」
「「「「絶対嘘だ」」」」
「おれの信用って一体.......」
そんな綺麗にハモらなくてもいいじゃないか。
「本当にどうしたの?今日は元気がないみたいだけど.......」
みんなが心配そうにソウルを見ている。ダメだ。やはり今のソウルに何か他のことを考えるような余裕はない。
「.......今日はちょっと体調が悪くてな。すまねぇけど帰らせてくれねぇか?」
苦し紛れにごまかしながらソウルは席を立つ。
「え、あ...うん.......」
そしてソウルは暗い面持ちのまま店を出て行った。
「.......ちょっと、何があったのよ?」
マルコが小声で尋ねる。
「わ、分かりませんわ」
ソウルに最後に会ったのはコーラリアから帰ってきたその日。マルコとオリビアに帰ってきたことを報告してまだ3日と経っていなかった。
「.......そう言えばコーラリアの時からずっと元気が無かった気がする」
シーナは帰りの船の上からソウルの元気がないような気がしていた。疲れているだけかと思っていたが、どうやらそうじゃないのかもしれない。
「.......ちょっと、追いかけてくる。ごめんね、後は女子会でもしててよ。また配下騎士の件は別日にしよう」
「.......うん」
「よろしくお願いしますね」
そう言ってレイはソウルを追って店を出た。




