答え
「.......サルヴァンはもう、落ち着いたんですか?」
シーナは寝癖を直した後、ジャンヌに気になっていたことを尋ねてみる。
「あぁ、何とかひと段落着いたところだ。もう私の手を借りなくともあの街は彼ら自身でやっていけると判断した。だからこっちに戻ってきたんだ」
サルヴァンは獣人のジャックとジャンヌが派遣した新たな領主のもと、共に街の再建とさらなる街の行商の発展のために力を注いでいるらしい。
その辺りの経過も順調で、街の人々と獣人たちでうまく折り合いをつけていこうとしているそうだ。本来のサルヴァンを取り戻すために。
「.......よかった」
シーナは安堵の息を漏らす。きっとアルとソウルも喜ぶだろう。
それを見てジャンヌはふっと笑顔を零す。
「コーラリアはどうだった?」
「.......大変でした」
シーナはため息をつく。本当に色々あった。イーリストに帰ってからレイが上手いこと報告してくれたので、あらかたの情報はジャンヌにも届いているだろう。
ちなみに水の聖剣については伏せておいたそうだ。色々なしがらみに巻き込まれてヴェンの人生がめちゃくちゃになるかもしれないから、とレイが言っていた。
「無事に帰ってきてくれてよかった。本当に君たちは優秀だな」
「.......そんなこと無いです。私はみんなの足を引っ張ってばかりでした」
「あぁ、それも聞いているよ」
シーナが突っ走ってしまったから状況が悪化した。それは例え万事うまくいったとしてもその事実は蔑ろにしていいものではない。
「だからこそ、今日はあの時の返事を聞きに来たんだ」
「.......返事?」
何のことだったか?シーナは首を傾げる。
「うちに、聖剣騎士団に入るつもりは無いか?」
「.......!」
そうだ、確かにサルヴァンに向かう前にジャンヌから聖剣騎士団に入らないか、と勧誘を受けていた。
サルヴァンの後のゴタゴタですっかり忘れていたが.......。ジャンヌは覚えていたのか。
「まだシーナは未熟かもしれないが必ず強い騎士になれる。その素質があるし、私の元に来れば聖剣の扱いも教えてやることができる。悪くない提案だと思うのだが、どうだろうか?」
「.......」
シーナは考える。いや、考えるまでもないのかもしれない。あの時は迷ったが今なら答えはすぐに出せる。
「.......ごめんなさい。お断りします」
シーナはぺこりと頭を下げた。せっかくここまで足を運んでくれたのに...。申し訳なさでいっぱいになる。
「ふむ、やっぱりな」
ところがジャンヌは分かっていたような反応をしている。
「一応、理由だけ聞いても構わないか?」
「.......私、ソウルのおかげで人を信じることができるようになりました」
シーナはたどたどしくはあるが自身の思いの丈を語る。
「.......ソウルと一緒にいて、初めてのことだらけです。今までは自分さえ良ければそれで良かったから。しんどい事も、あったけど...でも今は、大変だけどそれが凄い大切に思う.......んです」
ジャンヌは興味深そうに黙って聞いてくれている。
「.......きっと、私が聖剣を授かった理由も、ソウルとみんなと一緒に見つけていけるんじゃないかなって。私が立派な騎士になるには、きっとみんながいないとダメなんだって思うから.......だから、私はこのチームにいたいです。みんなと一緒に成長して行きたい」
シーナの目は真っ直ぐジャンヌを見つめる。ジャンヌも納得したように頷く。
「それでは、私たちの騎士団に無理に引き込む訳にはいかないな」
「.......ご、ごめんなさい」
「いや、いいんだ。まぁ正直ここまでは分かっていたからな」
「.......え?」
「だから話本命はこの先だ」
ジャンヌは微笑みながら告げる。
「君たち43班、我々の配下騎士にならないか?」




