コーラリアの戦い15【炎神バステオス】
ソウルから燃え上がる炎のようにマナが溢れる。
それはソウルの前方に展開し、ポセイディアとは違う獣を模したような赤い魔法陣を展開した。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
そしてその中心から業火と共に現れたのは緋色の肌をした大男のような姿をした新たな召喚獣。
全身が厚い筋肉で覆われ、全てを破壊する拳が力強く握られており、それを補助するかのように手首からは紅蓮の炎が吹き出していた。
頭からは2本の大きな角が生え、頭から首にかけてまるでたてがみのように赤い炎が燃えている。
そして、その顔はまるで獣の王。獅子のような顔だちをしていた。
「こ、これは!?」
レイはその熱波に思わず顔を覆う。
「まだ隠してやがったか。だがなぁ!お前が例えどんな召喚獣を使おうが、俺の防御は崩せねぇ!さっきのバカな召喚獣がいい例だ!!」
いくら召喚獣とはいえ、奴の完全防御を突破できるかは分からない。現にポセイディアでは奴の防御を破ることは叶わなかった。
「.......行くぜ、バステオス」
だが、ソウルは迷いなくイマシュに手をかざす。
新たな召喚獣バステオスはそれに応えるようにイマシュに向けて駆け出した。
「【拳】のマナ.......」
ソウルは拳を握り、マナを溜める。バステオスも同じように拳を作りイマシュの防御に向けて大きく振りかぶる。
「はっ、力勝負のつもりかよ!?だったらこれで絶望しろぉ!!【電界】に【防御】3乗のマナ!!【絶対防御障壁】!!」
イマシュは防御に特化した電界のマナにさらに追加で【防御】のマナを3つ練りこむ。
「同じマナを3つも!?」
通常、同じデバイス・マナは1つしか組むことは出来ないはず。それをまさか3つ同時に!?
「このバリアは触れたものを粉々に砕く最強の盾で最強の矛だ!!さぁ、破れるもんなら破ってみやがれぇぇ!!」
「ダメだ!ソウル!!」
ただでさえ防御に厚いイマシュの最大防御。いくら力自慢の召喚獣でも砕けるわけが無い。そこに素手で突っ込むなんて無謀だ!!
だがレイの制止を振り切ってソウルは魔法を発動させた。
「全てを破壊する拳!【メテオブレイク】!!」
バステオスの拳が炎に包まれる。そのあまりの火力に空気がバチバチと爆ぜる音が鳴る。
「俺たちの前に生半可な盾など見せるなぁ!」
「ゴオオオオオオオオオ!!」
ズシイイイイイイン!!!
バステオスの拳がイマシュの最大の盾に撃ち込まれる。
勝った。イマシュはそう思った。この盾は1度も破壊されたことはなく、仲間達にも破られたことがない。こんな野蛮な召喚獣ごときに破られるはずが.......。
ミシィッ
「……あ?」
ところが、イマシュの想像を裏切り最強の盾はミシリと鈍い音をあげる。
「お…おい……待てよ。まさか……そんな訳が……!?」
イマシュが動揺を口にする間にも障壁の亀裂は大きくなっていき、そして……。
バリィィィィィン!!
理解が追いつく前にイマシュの身体に強靭な拳が突き刺さっていた。
「ごっ!?はぁぁぁぁ!?!?」
イマシュの身体が地を転がる。
何が.......何が起こった?俺の最強魔法が...破られた!?そんな馬鹿な!?あんな簡単にあの魔法が破られる訳ない!!ま、まさか.......。
そんなイマシュの頭に1つの可能性がよぎる。
召喚魔法において、逆境を覆す可能性を持ったある能力、それは……。
「しょ、召喚獣の【保持能力】か!?」
「.......【防御破壊】」
ソウルはイマシュに告げる。
バステオスを使って分かった。
召喚獣には魔法とは別にそれぞれが備え持った特性がある。そして、その特性は召喚魔法を扱っている間のみ、召喚者にも適用される。
そうか、そういう事か。色々と合点がいった。
きっと、ポセイディアの保持能力は【自動回復】。これまでポセイディアを使った時、傷の治りが早かったのはポセイディアの力だったのか。
船の中で船酔いから回復したのも、サルヴァンの時、アルから聞いた話では致命傷と思っていた瓦礫の傷も、ポセイディアの力で回復できていたのだろう。
召喚していないことだけが謎だが、それだと色々説明がつく。
そして……これまで感じてきた違和感にも。
いや……今はよそう。ここで奴を倒すことだけを考えるんだ。
「行けぇ!バステオス!!」
「ゴオオオオオオ!!」
ソウルとバステオスは一心になりながら咆哮した。
「く、来るなぁ!!【全方向障壁】!!」
イマシュは全方向にバリアを展開する。だがバステオスに防御魔法は通用しない。
「【メテオブレイク】!」
バキイイィン!!
バステオスが持つ【保持能力】は【防御破壊】。冠する名の通り、バステオスには全ての防御魔法への特攻効果がある。
「あぎゃあああああ!!!」
再びイマシュは殴り飛ばされる。ミシミシと体は悲鳴をあげ、骨がゴキリとへし折れる音を聞いた。
くそ.......くそぉ!!!
身体はもう限界だった。ここまで……!?
「だ...だったらあのメス共も一緒に地獄に送ってやらァ!!」
せめてあのメスどもを殺して.......。
「させねぇよ!!」
「ガァァァァ!!」
バステオスは他に伏せるイマシュにとどめの一撃をたたき込んだ。
「が...ふっ」
「シーナ!アルー!!」
ソウルは2人に向かって駆け、そして彼女達を縛る牢獄に剣を振る。
「【劣化・風迅】!!」
パリィン
バステオスの【防御破壊】の効果を受けた黒剣がイマシュの魔法を破壊した。
「.......ぁ」
「.......ぅ」
そしてソウルは拘束から解放された2人の少女を抱きとめた。




