決意
「ヴェン、大丈夫か?」
砕け散る結界の残滓の中で立ち尽くすヴェンを見てソウルは不安になる。
「うん、もう大丈夫。ごめんよ、迷惑かけて」
しかし、ソウルの心配を他所にヴェンはそっとソウルに向き直った。
「.......いい顔になったじゃんか」
目の前のヴェンはもう出会った頃の気弱な顔をしていない。その目には一切の迷いはなく、成すべきことを為そうとしている男の顔だった。
「ううん。そんないいものじゃないよ。僕は、ずっと迷ってばかりだ。この島に来るのも、聖剣を継承するのも。ずっとソウル達に背中を押してもらってばかりで……でも、もう迷わないよ」
正直、自分が情けない。
だけど、もうそれもここまで。僕はここで変わるんだ。ソウルが、レイが……エリオットがアマデウスさんが、きっかけをくれたから。
覚悟を決める様にヴェンは【アンサラー】を握りしめる。すると、【アンサラー】の中の知識がヴェンに流れ込んできた。
今使えるデバイス・マナに、聖剣を操る身のこなし……。
よし、これならきっと大丈夫だ。
「それじゃあ3人を助けに行こう」
「そうだな。だけど、どうやって奴らを探す?」
もうイマシュもアイホートもどこか別の場所へと移動してしまっているだろう。ソウルたちはそれを追わなければならないのだが、手掛かりは残っているだろうか。
「それなら問題ないよ」
ヴェンはそう言って【アンサラー】を振る。
「シーナが持ってる【朧村正】を感じる。きっとそこにエリオットとアルも居るはずだ」
「わ...分かるのか?」
「うん...よく分からないけど感じるんだ。まだ慣れないけど……」
ここからそう遠くない、島の中央。巨大な岩が突き刺さっているあの場所だ。
「頼りにしてるぜ、ヴェン」
「よしてくれよ、まだ緊張で手が震えてるんだから」
そう言いながら2人で笑う。そして2人は駆け出した。
ずっと……待っててくれてありがとう、エリオット。もう少しだけ、待っててくれないかい?
必ず君とこの島をあの化け物から解放してみせるから。




