断る
「【アンサラー】を」
「.......継承?」
ソウルとヴェンは息を飲む。
伝説の力……七聖剣の一角を継承する?
「そうだ。私がどのように【アンサラー】を手にしたかは、伝えたな?」
「あ、あぁ。確か島の洞穴かなんかでって言ってたな」
「そうだ。本来、聖剣はその子孫へと受け継がれていくものなのだが、【アンサラー】だけは癖が強くてな。こいつが認めた者にしか扱うことを許さないんだ」
つまり、他の聖剣は聖剣使いの子孫に受け継がれるのに対し、【アンサラー】だけは持ち主を聖剣自体が選ぶということか?
「そ、それじゃあまるで聖剣が生きてるみたいじゃないですか」
ヴェンが顔をひきつらせながら告げる。情報が多すぎてもはやどんな顔をすればいいのか分からないのだろう。
「そうだ」
そんなヴェンにアマデウスは平然と告げた。
「聖剣は生きている。その成り立ちからな。だからそれぞれの聖剣ごとに継承方法や性質が違うんだ」
聖剣が生きている?
訳がわからない。聖剣とは一体どのようにして生まれてきたんだ?
「そ、それって一体.......」
ヴェンが問いかけようと口を開いたその時だった。
バチィッ
アマデウスが映る結界から何かが弾ける音がする。
「な、何ですか!?」
「言っただろう。この結界は長く持たないと。つまりこの結界と同調している私の身ももう長くはない」
「そんな……」
今のアマデウスは結界と一心同体。つまりこの結界が壊れた時、彼も運命を共にするということだ。
「だから、結界が壊れ、どうしようもなくなる前にお前たちのどちらかに聖剣を継承する」
「せ、聖剣を継承するって、どういうことですか?」
ヴェンはアマデウスに問いかける。
「【アンサラー】を扱った者は次の使用者を選び、使用権を譲渡することができるんだ。だから今からお前たちのどちらかに【アンサラー】を託し、今度こそアイホートを倒す。その為に私はこの1000年もの間結界を張り続け、奴の力を奪ってきたんだ」
そう言ってアマデウスは強く手を握る。
アイホートは1000年かけても倒せないほどに強力な魔獣。だからじわじわと奴の力を削ぎ落としてきた。
新たな【アンサラー】の使い手が奴を倒せるように。
未来に希望がつながる様に。それが最善だったから。
「さぁ、選択しろ!どちらが【アンサラー】を継承するかを!!」
そんなこと、迷う余地もなかった。
「ソウル...頼んだよ」
ヴェンには聖剣を扱うなんてこと、できるはずがない。ろくに剣も魔法も扱ったこともないのだ。
それに引き変えソウルは召喚魔法を操り、しかも高い身体能力と剣術を持っている。そんなソウルが聖剣を手にすれば、きっとイマシュとアイホートを倒すことが出来る!
「俺が...聖剣を.......」
ソウルは呟く。
「頼む...エリオットを.......みんなを...助けてくれ.......!」
ヴェンは真っ直ぐにソウルを見つめた。君しかいないんだ。僕には.......僕には無理だから。
ソウルはそんなヴェンに微笑みかけた。そして彼の肩に手を置き、告げる。
「断る」




