勧誘
「.......」
髪で顔はよく見えないが、体つきからおそらく女の子だろう。
歳はよく分からないがソウルと同い歳くらいに見える。ポケットに手を入れたまま柱にもたれかかり、髪の向こうから鋭い深紅の瞳がこちらを睨んでいた。
その姿は「こちらに近づくな」と主張しているようだった。
「.......えーと」
何も言わない少女にソウルも口どもる。しかし、話をしなければ何も始まらない。
「おれと、チームを組んでくれ!」
ソウルは射殺されそうな視線に耐えながら少女を勧誘する。
「.......」
しかし少女は答えない。言葉が足りなかったか?
「.......チームを...組んでください?」
ソウルは言い方を丁寧にしてみる。
「.......」
「.......チームに...入って.......頂けませんか.......?」
「.......」
「.......この私めと.......チームを.......一緒に築いていこうではありませんか.......?」
まずい、思考の終着点が見つからなくなってきた。
「.......他を当たって」
ようやく少女は機嫌の悪そうな声を出す。
「そ、そこをなんとか!」
だがソウルも食らいついていく。
「.......私は1人でいい」
しかし対する少女も頑なだった。
「で、でもチーム組まないと、騎士団に入れないし...」
「.......なんで?」
少女が何故そうなるか理解できない、といった様子で尋ねてくる。
「え?」
ソウルは目が点になった。
「いや、だってさっきあのおっさんがそう言ってただろ?」
白髪頭の大男を指さしながら伝えてみる。
「.......え」
少女の顔がみるみる青ざめていく。
「.......話、聞いてた?」
「.......」
無言。こいつ、聞いてなかったな。
「そ、そんなわけなんだ。お互いのために今だけでもいいから、チームを組んでくれないか?」
「.......なんで私なの?」
少女はソウルの胸の内を探るようにこちらを見つめる。その目は冷たく、まるで氷のようだった。
「.......うーん、なんでだろ?」
突然の質問にソウルも首を傾げる。
理由と言われても、さっきの魔法使いからやめるように言われたが、何故かそれがすごく嫌だと感じたからだ。
特に明確な理由はなかった。
こんな訳の分からない理由で誘うだなんて、気を悪くさせてしまったのでは無いか、と思う。
しかし、少女の反応は意外だった。
「.......え?」
目を丸くして警戒の色が解けた。だが、それは一瞬で、すぐに鋭い目つきに戻る。
「.......わかった。でも、今だけだから」
「ほんとか!?それじゃあよろしく頼むよ!」
ソウルは喜びのあまり握手しようと手を差し出す。
「.......」
少女はそれを無視すると目を逸らしながらソウルの後ろに回った。
「.......」
なぜ背後をとる?隣でもいいじゃないか、と少し寂しく思いながらも最後の1人を探さなくてはならないとソウルは意識を切り替えるのだった。




