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遺跡の中の戦い【暴走】

「エリオットが...コーラル卿の娘?」


 ここまでずっと黙り込んでいたヴェンが口を開く。


「.......っ」


 そんなヴェンを見たエリオットは気まずそうに目を逸らした。


「エリオットが生まれて間もない頃だ。アイホートが動き出し、奴の分身を生み出し始めた。もし幼いエリオットが捕まってしまえば内側から結界を破壊される。だからエリオットが生まれなかったことにして彼女を友人であるクリスに託したのだ」


「え、エリオットは...知ってたの?」


 ヴェンはエリオットの顔を見る。


「.......うん」


 エリオットは申し訳なさそうに俯きながら小さく頷く。


「そ、そんな.......」


「.......」


 ヴェンとエリオットの間に重苦しい空気が流れる。


「だ、だったら……だったらどうして……!!」



 ザバァッ



 ヴェンがエリオットに何かを叫ぼうとした瞬間、水の中から何かが飛び出し、ヴェンに飛びかかった。


「.......っ!」


 シーナは即座にその影に蹴りを放つ。



 ズドン!



 蹴り飛ばされたそれは、ドチャリと鈍い音を立てて壁へと叩きつけられた。


「な、何者ですの!?」


 そう叫ぶアルの手にナイフが顕現する。


「り、リッパー?」


 そこで潰れていたのは森でソウル達を苦しめた異形の化け物だった。


「来てしまったか」


 アマデウスの声を皮切りに遺跡の水面が波打ち始める。


「っ!まだまだ来ますわ!!」


 アルの耳が敵の接近を捉えて激しく揺れ、警鐘を鳴らす。


「全員、こっちに来い!!」


 それと同時にアマデウスが遺跡の奥へと駆け出し、ソウル達も後に続いた。


 ザバザバザバッ


 背後から次々と何かが飛び出してくる音が聞こえてくる。振り返るとそこには無数のリッパーと、狼のような姿をしたリッパーとは別の形の化け物がこちらを追っていた。


「初めて見るやつだ!」


 確かブラウンが狼みたいな奴も出るとか言ってたか!?


「かなり速いですわ!このままでは追いつかれます!」


 そいつは狼の姿をしているだけあってかなりの速さでソウル達を追いかけてくる。このままでは追い詰められてしまうだろう。


「.......任せて」


 それを見たシーナは詠唱を始める。


「.......我が魂に応えなさい。灼熱の炎を振るい、敵をうち滅ぼさん!【火聖剣】のマナ、【朧村正】!!」


 シーナから燃え上がるようなマナが溢れ、彼女の右手に収束すると火の聖剣【朧村正】が姿を現す。


 続け様にマナを溜めるとシーナは朧村正を通路の向こうへと向けた。



「【放出】のマナ、【焔】!」



 ゴッ!



 刀身から撃ち出されたのは高温の熱線。熱線は轟音と共に通路の敵を焼き払っていく。


「.......くっ」


 だが、敵は水のマナで動く化け物だ。火のマナは水のマナに弱く、思ったほど奴らを倒し切ることができない。


 それを見たアルがシーナに呼びかける。


「シーナ下がりなさい!相手が水のマナでは相性が悪いですわ!ここは...」


「.......大丈夫、これぐらい何とかできるから」


 アルの呼びかけにシーナは反発しそのままリッパーの群れの中に突っ込んでいく。


 炎が効かないなら、全て叩き切ればいい。シーナは迫りくるリッパー達を次々と斬り倒していく。


「なっ!?シーナ戻れ!!」


 ソウルの声も聞こえてくる。


 大丈夫。私はソウルの為なら何だってできるから、ちゃんと見てて?


 シーナはそう思いながらただひたすらに朧村正を振った。


 駆け抜けながらリッパーを3体切り捨てる。その背後から飛び出す狼は膝蹴りからの回し蹴り。蹴り飛ばした狼を敵にぶつけて、体勢を崩したところに【焔】を打ち込む。至近距離から熱線を受けたリッパー達は相性が不利でもその火力で一瞬で灰になっていく。


「いい加減にしなさいですわ!」


 そんなシーナを見かねたアルが後ろからシーナの肩をつかむ。


「.......離して。まだまだ戦える」


「ダメですわ。ここはあなたが1人で突っ込んでも埒が開きません。遺跡に詳しいアマデウスさんの指示に従って下がるべきです!足を引っ張らないでください!」


「.......っ」


 その瞬間、マーメイド・ボゥでアルに言われた言葉がシーナの頭をよぎる。



『このままではあなたのせいでソウルが迷惑してしまいますわ!』



『今のあなたでは足でまといです!』



「.......違う」


「え?」


 小さく震えながらシーナはアルを睨みつける。


 何?自分の方がソウルの役に立てるって言いたいの?


 そんな事ない。私だって……私だって……!!



「.......私だって!ソウルの役に立てるから!!」



 そう言い捨てるととシーナは再び敵陣に向かって駆け出した。


「バカ!?何を!?」


「ダメですよ、シーナさん!」


 暴走するシーナをアルとエリオットが追う。


「ちょっ!?何やってんだ!?」


 前を走るソウルも急いで3人を追いかけようとした、その時。


 ゴッ!!


「うがっ!?」


 目の前の通路が突然崩れ落ち、道が塞がれた。

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