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アマデウス

「で、でも待ってくださいですわ。エリオットさんは人の姿をしているじゃありませんの?」


 エリオットは島の上で普通に生活していたし、今の彼女は普通の人間と同じように足が生え地面を歩いている。


「人魚はいつも海の中で過ごしている訳では無いんです。人魚の姿と人の姿を使い分けて生活しています。だから普段は人の姿でその身を隠して、必要な時にこうして人魚に姿を変えるんです」


「なるほど...そりゃあ見つからないわけだよ」


 エリオットの言葉にソウルはため息をつく。


 だって、姿を人魚に変えなければ一生見つける事はできない。はなからほぼ不可能に近かったんだ、この任務は。


 実際、あれだけエリオットの近くにいたのにもかかわらず誰も気づくことはできなかった。


 ましてや、幼なじみでずっとそばにいたヴァンにもバレなかったのだ。かなり周到に姿を隠してきたのだろう。


「.......」


 そんなヴェンは俯いたまま、何も言わない。


 当然だ。幼なじみが実は伝説の人魚でした、なんて言われたらどんな反応をすればいいか分からなくなるだろう。


「じゃあ、どうして今になって姿を現したんだ?」


 では、そうなってくると、何故姿を隠し続けてきたエリオットが今、人魚としての姿を現したのか。


 そしてそれがあの連中と何か関係があるのだろうか。



「それについては私から説明しよう」



 突然、暗闇の向こうから喉が枯れかけたような男の声が聞こえてきた。


「.......っ!?」


「ちょっ!?」


 シーナとアルが驚いたようにソウルの背に隠れる。あぁ、お化けだとでも思ったのか。


「誰だ?」


 ソウルは未知の相手に2人を庇いながら黒剣を構える。


「安心しろ、敵ではない」


 そう言って暗闇の向こうから現れたのは、腰まで伸びた白髪の長い髪、胸にまで達するほどの髭をした男。


 瞳の色は青く、顔はシワだらけだが威厳を失っていない覇気のある顔をしている。


「あ、あんた何者だ?」


「私はアマデウス。この遺跡を守っている男だ」


 そう言ってアマデウスはエリオットに目をやる。


「この状況を見るに、奴に襲撃されたのだな?」


「はい。何とかみんなを上の入口へと連れていこうと思っていたんですけど、先回りされていて海中の方の入口を使うしかなかったんです」


「なるほど...アイホートはどれほど活性化していた?」


「もうほとんど自由に動き回っていました。ここに来るのも時間の問題かもしれません」


「そうか.......」


 そう言うとアマデウスはゆっくりと腰を下ろす。


「.......その黒剣、お前召喚士だな?」


「なっ!?」


 ソウルは背筋が凍る。


「何でそれを!?」


「何だと?お前、それも知らずにその剣を持っているのか?」


 ソウルの反応にアマデウスは頭を抱えている。


「全く.......【守人(もりびと)】の連中は何をやっているんだ」


「【守人(もりびと)】?」


 ソウルは聞きなれない言葉に首を傾げる。守人?それにこの剣って一体何なんだ?


「.......まぁいい。それよりも何故、エリオットが人魚の姿を見せたのかと問うたな」


「あ、あぁ」


 疑問は残るがまた後で聞けばいいだろう。とりあえず今は現状を打開しなければ。


「それは合図だったからだ」


「合図?一体何の?」


「封印がもう長く持たないという合図だ」


「封印?まさか.......あいつか?」


 ソウルはアイホートと呼ばれた白い化け物を思い出す。


「そうだ。コーラリアの領主に代々受け継がれている口伝がある。『人魚現れし時、外の世界より英雄を呼べ』とな」


「人魚現れし時.......つまり今の状況ということですの?」


 コーラリアで人魚の目撃が出始めた現状がまさにその口伝の通りということか。


「左様。この遺跡は私が奴を封印するための場所。私はここを動くことはできない。だから人魚の力を借りて陸と情報の交換を行ってきた。だが時代とともに人魚の境遇も変わり、そう易々と存在をさらけ出すわけにもいかなくなった」


「.......だから、危険な時は直接知らせる代わりに人魚が姿を現すから島の外に助けを求めてってこと?」


 しばらく黙っていたシーナが口を開く。


「ほぅ、なかなか賢いじゃないか。聖剣使いのジャガーノートよ」


「.......っ」


 シーナは言葉を失う。


 まさか、シーナが聖剣を使えることまで見抜いたのか?この男…ほんとに何者だ?


「それが分からんのは、まだその娘が聖剣使いとして未熟だからだ。真に聖剣を扱えるようになればそれぐらい分かるようになるさ」


「.......まだ、未熟」


 それを聞いたシーナは何かを考え込むように俯く。


「まるで、聖剣がどんなものか知った様な口振りで話しますのね」


 アルは謎だらけの男に警戒を崩さないまま告げる。


「当然だ。なぜなら私は」


 そんなソウル達にアマデウスは淡々と宣言する。




「水の聖剣使いだからな」

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