238/1167
入江での戦い5
「ひっひっひ」
男...イマシュは不敵な笑みを浮かべる。
雷属性を持つ彼にとって人魚は最高の相手だった。あの水の壁も簡単に貫けるだろう。
それでも魔法を緩めないのはこちらの視界を封じ、撹乱するためだろう。
「見えてるんだよねぇ」
だが、水の壁の向こうには薄らと奴らの影が見えている。
バチィン
ついに【障壁嵐】が水の壁を破る。
「死ね」
イマシュは水の向こうに映る影に向けて魔法を叩き込んだ。
バリバリバリバリッ
「.......あ?」
手応えがない。人間を焼き焦がすあの快感が感じられない。
イマシュは目を凝らす。そこには何かの破片がゆらゆらと波に揺られていた。
「.......くそが」
イマシュは歯ぎしりする。
そこには木の破片が散らばり、人魚と新米騎士どもの姿は無くなっていた。
小賢しい真似を...イマシュの頭が沸騰しそうになる。しかし、すぐに次へと思考を移す。
「.......行先は分かってるんだ。そこを叩けばいいか」
そう呟くとイマシュはアイホートの背に乗り海を進むのだった。




