間章
エリオットは1人、ヴェン達が旅立った海を眺めていた。
「エリオット」
「.......お父さん」
振り返るとそこにはいつもと変わらない優しい父の笑顔があった。
「ヴェンは……行ったんだね」
「うん……大丈夫だといいけど……」
そしてエリオットはまた海へと視線を戻す。いつもと変わらない穏やかな海。ずっと、ずっと変わらない波の音がエリオットを包み込む。
「.......ねぇ、お父さん」
「どうしたんだい?」
「今が、その時なのかな」
そう言ってエリオットはぐっと自身の手を握りしめる。
「.......うん」
クリスは小さく頷くことしかできない。
「そうかもしれない」
「.......そっか。やっぱり、そうだよね」
そう言ってエリオットは視線を落とす。
「.......あの日も、こんなに透き通った晴れの日だったな」
青く広がる空を仰ぎながら父は語る。
「エリオット、お前が僕の所に来てくれたのは、この海からの贈り物だったんだって、そう思ってるよ」
「そんな.......私、まだお父さんに何もできてない。いつもいつも...本当にいっぱい迷惑かけて、本当にごめんなさい」
「何を言っているんだ。お前がいてくれたことに、僕は感謝しかしていないよ。エリオット、いつもそばに居てくれて、ありがとう」
「.......お、父さん」
「エリオット」
エリオットは堪えていた涙が溢れ出し、父は彼女をそっと抱きしめる。
「僕は、君の本当の父親だと思ってる。どうか、無事で」
「……うん」
2人は抱きしめ合いながら静かに涙を流した。




