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森の中

 森に入ると中は蒸し暑くジメジメしていた。


「す、凄い木だな」


「イーリストでは見ないね」


 森の中は手付かずの自然に溢れ、見たこともない植物があちらこちらに生えている。


 周りの木々は立派で樹齢何百年だろうと言った木々も珍しく無い。


 それにツタのような植物や鳥の羽の形をしたような植物など珍しいものだらけで目が回りそうになる。


「は、はい。珍しい植物もたくさん生えているので森の中も有名な観光地なんですよ」


 そんなメンバーにヴェンが補足してくれる。


「へぇ」


 確かにこんな珍しくて面白い物が並んでいるのならば植物に詳しくないソウルでも楽しめそうだ。


 まぁ、今は観光なんてできる訳もないのだろうが。


「ってか、ヴェン。ずっと気になってたんだけど......それ、なんだ?」


 そう言って、ヴェンが握る太い一本の棒に目をやる。


 先程森の入り口に落ちていた細い棍棒のような棒を拾ってきていたのだが、一体何なのだろう?


「あ、これは護身用に持っておこうと思ってね」


 そして手慣れた手つきでブンブンと振り回す。


「随分手馴れてるな......」


「うん。海の面倒な海獣とかが出たらこんな棒でよく追っ払うんだ」


「へぇ。それじゃあ期待できそうだな」


「いやいや。流石に化け物相手には気休め程度にしかならないよ」


 そんな風に話しながら歩いていると、アルの耳が急にピンッと真っ直ぐに伸びる。


「.......何か、いますわ」


 警戒するように目を凝らしながらアルはそっとナイフを構えた。


「!」


 それに倣うように他のメンバーもそれぞれ構えをとる。


「前方からどんどん近づいてきます。それもかなりの速さですわ」


 やがて、ガサガサとアル以外のメンバーの耳にもその音が分かるほど近くなっていく。


「.......来るぞ」


 ギドが目の前の茂みを睨みながら告げた、その時だった。



「ギャゴオオオオ!」



 茂みから何かが飛び出した。


「なっ!?」


 現れたそいつは歪な形をしていた。


 全身は黒と黄色と水色の縞模様。下半身はクモのような8本足で上半身は鎧を着た人間のような形をしている。


 その姿はまるでクモの体に人間の上半身をくっつけたようだった。


 だが両手はカマキリのような鋭い刃物になっておりギドに向かって鋭く斬り込んでくる。


「ギド!」


「任せとけって」


 ギドは斬撃を後方に飛び退いて躱すと自身の腕をそいつに向ける。


 そして、凶悪な笑みを浮かべながら詠唱を始めた。


「【電磁】のマナ、撃ち抜け!【パルス】!」


 ズドンッ


 するとギドの服の袖から何かが超速で発射され、目の前の化け物の頭を撃ち抜いた。


「ギャァァァァア!!」


 ギドの攻撃を受けた化け物は鋭い悲鳴と共に倒れ、ビクンと身体を痙攣させたかと思うとそのまま動かなくなってしまった。


 シュルルルルッ


 ギドから放たれた何かが戻ってくる。


「ロープ......?いや、ロープにしては何か光沢があるな」


 見ると、何やら鉄線をより合わせたロープのような物がギドの服の袖の中へと吸い込まれていく。


「確か、ワイヤーっていうんだっけ?」


「あぁ。鉄線をより合わせたワイヤーの先に矢じりをつけてある。俺のオリジン・マナは【雷】と【地】の属性でな。2つを混ぜ合わせると磁力を操る【電磁】のマナになるって訳だ。そんで上手く磁力を操りゃこんな感じでワイヤーを自由自在に操れるってわけさ」


「そ、そうなのか」


 ギドの服に吸い込まれていくワイヤーを見つめながら告げる。


 確かに孤児院にも2つのオリジン・マナを混ぜて変な魔法を作ってる奴がいたなぁ。


「し、死んだのかな?」


 すると、ロッソが恐る恐る足で化け物をつついてみる。


 ゴロリと頭が上を向いたかと思った次の瞬間。



「ピギィィィイイイイイイイイイイイイ!!!!」



 倒れていた化け物が甲高い悲鳴を上げる。その声はまるで森中に響き渡るかのような声だった。


「う、うわぁぁあ!!!」


 突如叫びを上げる醜いモンスターにロッソはたまらず悲鳴をあげる。


「バカロッソ!またあなたは余計なことして!!」


「おいおいおい、これってまさか.......!」


 モニカはあたふたと辺りを見渡し、ギドの頬に一筋の冷や汗が流れ落ちた。


「っ!あちこちからたくさんの気配がこっちに迫ってきてますわ!」


 アルが再び耳を澄ますやいなや、切迫した声をあげる。


「撤退しよう!みんな走れぇ!」


 レイが叫ぶと同時に森の向こうからガサガサガサと大量の何かが迫ってくるのがわかる。


「いけ!いけぇー!!」


 そして一同は一目散に森の外へ向かって駆け出した。

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