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船の上

「お、おぉぉぉ.......」


「は、ははははは.......」


「.......」


「ぎ、ぎもぢわるいでずわぁぁ.......」


 暗い部屋の中でソウル達は寝床に転がって悲鳴を上げていた。


 ハトボル港を出てからしばらくの間、海は穏やかだったがやがて天候が崩れ、激しい波が船を揺らし始めた。


 その揺れは凄まじく、船に慣れていない4人はすぐに船酔いしてしまったのだ。


 外は分厚い雲に覆われて昼間だと言うのにまるで夜のように真っ暗。さらにゴロゴロと腹の底に響くような雷の音がソウル達の精神を削る。


「ま、またか...結局またこうなるのか.......」


 くっそ、馬車は大したこと無かったから今度こそ無事に辿り着けると思ったのに.......。


「だ、大丈夫?ほら、これを飲みなよ」


「ず、ずまねぇ.......」


 ヴェンはそんな4人に酔い止めの薬を渡してくれる。


「ヴ、ヴェンは大丈夫なのか?」


 ソウルは酔い止めを一気に飲み込みながら尋ねてみる。


「うん、僕は慣れてるからね」


 ヴェンは笑顔でそう答えた。船乗りってすごいなぁ.......。


「俺、船はダメだな...キツすぎる」


 ソウルはそう言いながら再び寝床でぐったりと項垂れる。


「いや、これだけ船が揺れてたらそうなるよ。ソウルはまだマシな方だと思う。むしろ他の3人の方がキツそうだし」


 そう言いながらヴェンは他の3人を見渡す。


 今ソウル達は43班に充てられた船室の中にいた。


 狭いが一応、寝床が4つ壁に備え付けられているため、見習いとしてはまぁかなり優遇された立場であると言えるだろう。


 そして4人ともその寝床の中でこうして悶え苦しんでいるというわけだ。


 レイは壊れた人形のように不気味に笑い続けているし、シーナは表情はよく分からないが寝床に突っ伏して動かない。


 アルはずっとサルヴァンにいたのだ。船の類に乗ったことが無いため1番キツイらしく、トイレと寝床を行き来して何度も吐いている様子だった。


「すまねぇな...部屋も違うのにこれだけ介抱してもらっちまって...」


「いいよ、気にしないで」


 ヴェンはにこやかに答えてくれる。ほんと、いいやつだ。


 ちなみにヴェンは船を動かす船員の大部屋に寝床を確保してもらっている。


 ブラウンに今回ヴェンを連れて行きたいことを伝えると2つ返事で了承してくれた。


「ただでさえ難しい任務だ。少しでも可能性が上がるなら連れてくるといい。ただし、それにかかる経費はお前達が負担するのだぞ」とのことだ。


 なんか、お金持ちのくせに懐が狭いような気はせでもないが。


「あと、どれぐらいかかるんだろな.......」


 この地獄から後何時間ぐらいで解放されるのだろうか。


 2時間...いや、半日かかるのかもしれない.......。


「うーん、そうだね.......」


 ヴェンは少し考えるような素振りを見せて答える。



「あと、2日ぐらいかな?」



「おおおぉぉぉぉぉ.......」


 ソウルはヴェンから告げられた死の宣告に悲鳴を上げるのだった。


ーーーーーーーー


 一方その頃隣の部屋では。


「み、みんな...生きているか?」


 エドワードは横になりながら床に伏せる仲間へと声をかける。


「こ、殺してくれぇ...いっそ殺してくれぇ.......」


 いつもの強気な兄貴分が寝床の上でのたうち回っている。


 普段のエドワードならそのシュールな光景を面白おかしく感じるのだろうが、今のエドワードにそのような余裕などない。


「み、皆さんまだまだです...ね。私は...ピンピンして.......うっぷ」


「ま、また強がってるのかモニカは...素直にダウンしてればいいのに.......」


「だ、ダウンしてるのはロッソでしょう?...うげぇ.......」


 モニカとロッソはお互い船酔いでボロボロのくせに相も変わらずそんな言い合いをしている。


 元気がいいのか、仲がいいのか。


「み、みんな頑張って乗り切るぞぉ.......」


 それでも、確かコーラリアまではもっと時間がかかるはず...。先は長いが、堪えるしかない.......。


「「「お...おぉ~.......」」」


 そんなエドワードの激励に力ない返事が部屋に響くのだった。

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