決着
「ああぁぁぁぁ!!!」
風に体を抉られながらもソウルはただエドワードに向かって突撃する。
そして、ソウルは半ば倒れ込むようにエドワードの手の平へ剣を押し込んだ。
「ぐっあああああ!!」
エドワードは悲鳴をあげる。それと同時に【トルネード】はマナを失い、霧散する。
その残滓はまたソウルの肌を引き裂いていく。
それでもソウルは怯まずにそのまま一気に距離を詰めるとエドワードの首元に剣を突き立てた。
「.......っ!」
「.......っ、おれの.......勝ちだ...!」
ソウルは痛みを堪えながら勝利宣言する。
コロシアムは一瞬静寂に包まれた。
そして
「おおおおおおおおおおお!!!!!」
割れんばかりの歓声が上がる。
「.......っ!」
長かった。ソウルは感慨深く思う。
ここまで来るのに、6年...いや、11年かかった。その月日を噛み締めながらソウルはその場に倒れ込んだ。
エドワードは呆然とその場でうずくまる。
完敗だった。
それも、魔法の使えない凡人に。貴族として、恥を重ねてしまった。なんて情けないのだろうと思った。
しかし、それは一瞬だった。
とても...とても充実した闘いだった。お互いに魂の全てをかけて戦い、そして敗北した。
エドワードはどこか解放されたような気分だった。
「そうか」
エドワードは理解する。そういう事だったのかと。
騎士に入ることが貴族の誇りではない。
あの男のように、全身全霊をかけて戦うこと。それこそ貴族として民に向けて胸を張れる姿なのだと。
「.......全てにおいて、私の完敗だ」
エドワードはフッと笑う。
「これからでございます。エドワード様」
執事のナハトがエドワードの腕の治療をしながら微笑む。
「ご立派でしたよ。我が主」
「.......ふっ、まだだ。これからもっと精進するぞ!真に誇りある貴族になるために、これからも私は戦い続ける!」
エドワードは立ち上がり、観客に向けて一礼する。
「魔法の使えないやつに負けやがって!」
「情けないぞー!」
様々な野次が飛んでくる。
しかし、エドワードはめげない。いつか、あの男ともう一度戦いたい。大きくなった自分を見せて見返してやろうと固く誓うのだった。
ーーーーーーー
「面白いやつだ」
多くのVIP席の貴族たちが騒然となる中、ジャンヌは心から面白そうに告げる。
「しかし、荒削りですな。勝利した彼の方がボロボロではないですか」
大男は苦笑いするしかない。なんて荒っぽい戦いだ。
「あぁ。だがあの技術を習得するのには半かな覚悟では行くまいよ」
「聖剣に選ばれたあなた様だからこそ理解できる、と言った所でしょうか」
大男は辺りを見渡す。周りの貴族達はジャンヌと違い、あまりソウルに対してよい印象を持っていない様子だった。
「あの男を弟子にとってみてはどうだ?ジェイガン」
ジャンヌは少し悪戯っぽく笑う。
「いやぁ、私の専門は武術ですぞ。あなた様が弟子にしては?」
大男ジェイガンもニヤリとしながら言い返した。
「まぁ、興味はあるが。流石にこの立場では弟子は取れんよ」
肩を竦めてやれやれと言った様子でジャンヌは答える。
「またいつか会う機会があれば、ゆっくり話でもしてみたいものだ」
ジャンヌはそう言うと次の試合に目をやるのだった。




