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不穏

 次の日、いよいよコーラリアへと出発する朝がやってきた。


 ソウルとレイは簡単に身支度を済ませ、まだ少し薄暗い廊下を歩いていた。


「いやぁ、いい寝心地だったな」


「全くだね。いい部屋だったよほんと」


 2人の部屋は適度に風通しがよく、非常に心地よい室温が保たれておりぐっすりと眠ることができたので2人の調子はすこぶるよかったのだ。


 そしてそんな軽快な足取りで食堂に向かうと、



 食堂の中では鈍重な空気が流れていた。



 そこには先に起きて席につくシーナとアルの姿があるのだが、明らかに様子がおかしい。


 2人とも不機嫌な顔をしていて眉間にシワがより、お互いに目を逸らしあっている。


 しかも、あまりよく眠れなかったのだろうか。目の下にはくっきりとクマが刻まれており、ただでさえ悪い目つきをさらに凶悪な物にしていた。


「.......」


「.......」


 .......え?何があった?


 ソウルは咄嗟にレイの顔を見る。


 そこにあるイケメンの顔は硬直したように笑顔のままピクリとも動かない。これは緊急事態ということか。


「お、おおおおはようございます」


 食堂へと入りあぐねていると、ガタガタと身を震わせるヴェンが現れた。


「ヴェン、ちょっとこっちに」


 ソウルはヴェンを捕まえると、そのまま物置の中へと移動する。


「な、何があったんだ?」


 明らかに何かがあったに違いない。出発する前から機嫌の悪かったシーナならまだしも、アルまであの調子なのは流石におかしい。


 一体何があったんだ!?


「そ、それが朝随分早くに降りてきたかと思ったら既にあの状態で.......」


 ヴェンも何があったのか分からない様子で取り乱している。


 そりゃそうだ。シーナのあの顔に耐性がある俺達ならまだしもシーナのことをよく知らないヴェンにとっては恐怖の象徴でしかないだろう。


「あぁ...しまったなぁ、僕がついていながら.......」


 すると横でレイが頭を抱えながら呟いていた。


「何か知ってるのか?」


「いやぁ、おおそよはね.......」


 レイは苦笑いしている。


「じゃ、じゃあ何とかしてやらねぇと.......」


 このままではこの先の任務も不安だ。しかし、レイはそっと首を横に振った。


「いや、ここまで来ちゃったならもう当人達で解決してもらうしかないかな」


 そう言ってレイはがっくりと項垂れてしまうのだった。


ーーーーーーーー


 結局あれからずっとシーナとアルの不機嫌な状態が続き、一触即発のビリビリとした空気の中ハトボル港への集合の時間が迫る。


「.......」


「.......」


 声をかけてもアルは「えぇ」「そうですわね」など淡々とした返事が返ってくるだけだし、シーナに至ってはひたすらに無言を貫き通していた。


 この旅の間シーナの様子は明らかにおかしかった。いつもの事ですぐに元に戻るだろうと楽観的に見ていたことが災いした。


 きっとレイもここまで状況が悪化するとは思っていなかったのだろう。もう少し様子を見ているつもりだったのが夜にヴェンと話している少しの隙にこうなってしまったそうだ。


 こうして5人は重苦しい空気で集合場所へとたどり着いた。


「おぅ、おめぇら。宿は見つかった...のか.......?」


 すると、何も状況を知らないギド達がやって来るが、すぐこちらの状況がおかしい事に気がついたようだ。


「よぉし、ちょっとツラ貸せや」


 そしてギドは少し考えるとソウルとレイの肩を組み、人混みから離れた場所へと2人を連れ出した。


「.......おい、何があった?」


「そ、それが...朝起きたらあの状態で.......」


 ソウルは頭をガシガシとかきながら簡単に状況を説明する。


「.......レイ、もしかしてこいつの件か?」


「い、痛い痛い」


 ギドはソウルの頬を引っ張りながら告げる。え?俺の件?


「うん、恐らくね。まさかここまで一気に悪化するとは思ってなかったけど」


 レイは疲れ切ったようにギドに頷き返す。


「ったく、朴念仁め。少しは気が使えるようになれよ」


 そう言いながらギドはグリグリと頬を引っ張る力を強くする。おい、そろそろ俺の頬が千切れそうだから止めてくれ?


「なっちまったもんは仕方ねぇ。今は下手に口出しても火に油を注ぐだけだからそっとしておくしかねぇな」


「うん。また話せそうならぼくからフォローを入れておくよ」


「???」


 話の意図が読めないソウルは1人会話から取り残されるのだった。

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