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試合

「面白いな」


 VIP席から試合を鑑賞している金髪の少女はボソリと呟く。彼女の金の瞳は試合に釘付けになっていた。


「ほぅ、あなたに弱い者いじめを楽しむご趣味があったとは。ジャンヌ様」


 白髪頭に厳格そうな顔持ちの大男が少し面白そうに話しかける。


「マントの男は魔法が使えないそうじゃないか。そしてあの風の使い手もなかなか慎重に追い詰めている。万が一にも勝ちを逃さないような立ち回りだ」


「まぁ、この試合の結果は明らかでしょうな」


「あぁ、普通ならそう思うだろう。しかしな」


 ジャンヌは面白そうに告げた。



「あの男、まだ目が死んでいない」



ーーーーーーー


 激しい風の渦、【トルネード】が真っ直ぐにソウルを捉える。もう回避は不可能だろう。エドワードは勝利を確信した。


 しかし、ソウルは諦めていなかった。いや、むしろこれを狙っていた。


「お前にも、背負ってるもんはあるんだろう。だけどな.......」


 ソウルは思い出す。6年前の悲劇と、この6年間の軌跡を。


「おれにだって、譲れねぇもんがある!そして、そのためにこの6年を費やしてきたんだ!」


 そう叫びソウルは駆け出した。


「!?」


 あろうことか、ソウルは目の前の【トルネード】へと突っ込む。


「馬鹿な!?死ぬ気か!?」


 周囲の予想を裏切り、ソウルは【トルネード】の中心へと飛び込んだ。


ーーーーーーー


 この6年でシナツから最初に叩き込まれたこと、それはあらゆる魔法の知識だった。


「いいか、クソガキ」


 シナツは言った。


「まずは、相手の使う技を理解しろ。それぞれの魔法の性質と、弱点。そして、相手の魔法の癖を見るんだ。一概に魔法って言っても使うのは人間だ。魔法の形成や発現、使い方にはそいつなりの癖がある。それを利用してやるんだ」


 ソウルはただ逃げ回っていたわけではない。エドワードの魔法を観察していたのだ。


 【トルネード】の魔法は範囲威力ともにバランスが良い。しかし一方でその渦の中心は効果が及びにくい性質があった。


 そして、エドワードの場合、他の魔法使いに比べてと中心への効果が薄くなっている。


 ソウルはその隙を見逃さなかった。


 そしてソウルはマントを被って渦の中心へ向かって跳躍する。


「ば、ばかな!?いくら中心への効果が薄いとはいえ、全く届かない訳では無いぞ!?吹き飛ばされて終わりだ!!」


 勝ちを確信したエドワードは渦の中心にいるソウルを見て驚愕する。


 ソウルの被るマントが魔法を弾いていた。


「なに!?」


 ソウルの被るマントは闇属性の力が付与されたマントだ。


 闇属性は光以外の属性への耐性がある。故に多少の魔力であれば弾くことができる。


 しかし、それも完璧ではない。いくら耐性があるとはいえ所詮は布一枚だ。防具としては物足りない。


 だが、ソウルはこのマントが耐え切れるほどの被弾で済むように身をねじる。


 そして上手く弾き出されないようにまっすぐエドワードへ向かって突っ込む。


「っ!ならば!」


 エドワードは込めるマナを強めた。今の威力で足りないのであれば、もっとマナを込めて中のソウルを弾き飛ばせばいい。


 【トルネード】の力が強まり、ソウルのいる魔法干渉の少ない空間が狭まっていく。


「.......それを、待ってたんだ!!」


 それを見たソウルはマントを自身の足元へ脱ぎ捨てると、マントを踏み台にした。


 【トルネード】のマナ量が上がると、【トルネード】自体の密度が上がる。そして、闇属性の付与されたマントには風属性への耐性がある。


 密度が上がったことで、【トルネード】がソウルが踏み込むことができるほど実体のあるものになっていた。


 そしてマントの耐性により、【トルネード】に巻き込まれる前に踏み切る足場を作ることができる。


 ソウルはマントを踏み台に一気に加速した。代償として背後でマントが飛散する。


 【トルネード】の中で風がひしめき、風がソウルの肌をどんどん削る。


「勝負だ!エドワード!!」


「っ!こい!ソウル!!!」


 共に咆哮する。そして


「ああああああああぁぁぁ!!!」


 ソウルは剣をエドワードへ突き出す。


「負けるかぁああああ!!!」


 エドワードも負けじとマナを絞り出し最大まで火力を引き出した。

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