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出発

「ソウル!遅いよ!」


 集合場所からレイが大声をあげる。


「わ、悪い悪い!」


 ソウルはそんなレイ達の元へ汗だくになりながらも駆け寄った。


「もうっ、ギリギリですわよ」


 アルは相変わらずプリプリしてソウルを出迎えた。


「わ、悪い...ちょっと寄るところがあって...間に合ったから許してくれ」


 そんな2人にソウルは苦笑いする。いつもよりも早めに出たと思ったのに、結局メルヘン婆さんの店に寄ったことで遅刻寸前になってしまったのだ。


「.......」


「?シーナ?どうした??」


 一息ついて、ふとシーナに目をやると何やらすごく不機嫌そうにしているのが目に映る。


「.......何でもない」


 ソウルが呼び掛けてもシーナはムスッとしている。明らかに何かがあったに違いないだろう。


「何かあったんだろ?話してみろよ」


「.......別にいいでしょ」


 良かれと思ってシーナに声をかけてみるも、シーナはさらにムッスーとする。


 何だ?すごく気になるんだが?


「言わなきゃ分かんないし、言ってみろって」


「.......バカ」


 しかし、シーナはそう言うと完全に黙り込んでしまった。


「な、何なんだよ」


 ソウルは状況が飲み込めず困惑する。


「シーナ?どうしましたの?」


「.......」


 アルも心配そうにシーナにそう声をかけるがシーナはさらに不機嫌そうに眉間にシワがよっていく。


 これはただ事ではない。


「.......ねぇソウル。少しいいかい?」


 一連のやりとりを見ていたレイが小声でコソッとソウルに問いかけてくる。



「任務までのこの1週間、君のスケジュールは何だい?」



 何故今そんなことを聞くのだろうと思いつつ、ソウルはこの1週間の出来事を遡っていく。


「えーと...3人で飯食って、師匠が来て剣の修行をしとけって言うからアルと一緒に剣の修行をして.......」


「あー、うん。もういいよ、大体わかった」


 そこまで聞いたレイはあははと乾いた笑いをする。


「?何が分かったんだ?」


 俺の行動とシーナな状態に何の関係が?



「.......全く、本当に面倒事が絶えないなぁ」



 首を傾げるソウルをよそに、レイは疲れきった顔でそう告げていた。


ーーーーーーーーーー


「それではこれより、ハルボルまで出発するぞ!」


 茶髭の騎士ブラウンはそう力強く号令を出した。


「2班で1つの馬車を使え!船は4日後に出港予定となっている!まぁ余裕を持ってたどり着けるはずだ!各自安全運転で頼む!以上だ!」


 そう言ってブラウンは側の豪華な馬車へと乗り込んだ。


 ブラウンの乗り込んだ他にも多くの豪華な馬車が並んでいる。どうやらブラウン達の部下の物のようだった。


 どうやらこのブラウンという騎士はかなりの金持ちなのだろう。ソウル達が乗る馬車もきっと豪華に違いない。


 そう思ってソウル達はブラウンの部下に案内された場所へと向かう。すると



 そこにはみるも無残なボロボロのみすぼらしい数台の馬車が用意されていた。



 ソウル達はおかしいだろ、と訴えかけるようにブラウンの部下に視線を送るが完全にスルーされてしまった。


「.......またこれはきつい旅になりそうだなぁ」


 ソウルはボロボロの馬車を見ながら呟く。


「あはは、まぁハトボル港までは舗装されてるし、速度も普通のはずだからこれまでよりはマシなんじゃないかな」


 馬車で1番酷い目にあっているレイは遠い目をしている。


 そ、そうだな、確かにこれまでの旅に比べれば馬車がボロいだけで1番マシかもしれない。そうだ、そう考えよう。


「お、ソウル、レイ!」


 すると自分を洗脳しようと躍起になっているソウルの背後から声がかけられる。


「ギド!」


 そこには灰色頭の高身長のギドとその仲間たちが立っていた。


「よかったら僕たちと一緒に行かないか?見知った仲だし、気も楽だろう」


 エドワードがギドの横横から申し出てくる。


「そうだな。お前らとならこっちもありがたいよ」


 そんなエドワードの申し出にソウルもにこやかに了承した。


 正直、ソウルたち43班の立場は微妙だ。他の班と一緒では厄介物を見られるように扱われ気まずくて仕方ないだろう。


「でも、いいのか?あまり俺たちといると変な目で見られるかも知れねえぞ?」


 自分で言うのも悲しいのだが.......。


「安心しろ、俺達も他の班とはあまり一緒にいたくねぇんだ。お互い様ってとこだよ」


 そんなソウルの言葉にギドは苦笑いする。


「何でだ?」


「訳ありが多いんだ、このチームは。だからおめぇら程じゃねぇが悪目立ちするんだ。だから俺らとしてもおめぇらといるのが楽なんだよ」


 ソウルの質問にギドは少しバツが悪そうに答える。


「.......そっか」


 深くは尋ねない方がいいだろうと感じソウルはそれ以上は詮索しない事にした。


「まぁ。その辺はおいおい話してやるよ。さぁとりあえず行こうぜ!」


 そう言ってギドは切り替えるように元気よく馬車に乗り込んだ。

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