手紙
「うーん.......」
ソウルは目を開く。
「っ!シナツは!?」
部屋をキョロキョロと見まわすがそこには誰もいない。もうすでに家を出てしまったようだ。
「.......たく、少しはゆっくりして行けよ」
相変わらずの風来坊な師匠にソウルはため息をついた。
久々に料理も振舞ってやりたかったし、もっと話をしたかったのに...。ソウルは強い孤独感を感じながら立ち上がった。
「.......ん?」
ふと見ると、机の上に手紙が残されているのに気がついた。きっとシナツだろう。ソウルは封を破って中を見てみる。
『ソウル。久々に顔が見れて、まぁ退屈じゃあなかったよ。及第点程度にはうまくやってるみてぇだから送り出したおれとしてはまぁよしってところだな』
ガサツな文字で書かれた偉そうな文面。間違いなくこの手紙はシナツのものだった。
「.......相変わらず上から目線だなぁ」
あまりの言い草にソウルは苦笑いするしかない。
『そんなお前に伝えておくことはしっかり剣の腕を磨いておけってところだな。これから先は今まで以上に剣の腕が重要になる。召喚魔法を使うのなら、なおさらな』
「.......召喚魔法を使うのに剣の腕が重要になる?」
何だろう。召喚魔法を使わずに対処できるようになっておけってことか?
『俺の目的の為に、またしばらく旅に出る。おめぇに恥をかかれると剣を教えた俺の名に傷がつくからな。体調だけは整えとけよ、また顔を出せそうなら顔を出す』
手紙はそう締め括られている。
短い手紙ではあったが、それがシナツなりの愛情表現なのだとソウルには分かっていた。
「.......」
ったく、本当に不器用で優しい師匠だよ。ソウルはシナツを師匠に持ってよかったと胸が熱くなる。
「分かったよ。剣の腕を磨いてやるさ、シナツ!」
こうしてソウルの任務までの予定が確定した。




