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師弟水入らず

「随分と暴れてるそうじゃねぇか」


 シナツは椅子に座り、足を組みながらソウルの顔を覗き込む。


「お、俺だって好きで暴れてるわけじゃ...」


 ソウルは正座をしながら頭をガシガシとかく。


「召喚魔法も...そうだな、2回は使ったって所か?」


「うぐっ」


 何でだ?何で全部お見通しなんだ!?


「このひと月、随分立派に騎士やってんなぁ。なぁ、ソウル?」


 心底楽しそうにシナツは告げる。くっそ。本当に俺をいじるのを心底楽しそうにしやがって.......!


 修行の期間中も何度ソウルの失態を肴に弄り倒されたことか。思い出すだけでも頭が痛い。


「そ、それ以上はやめてくれ...」


 ソウルは反論する気力もなく、力尽きるようにがっくりとうなだれた。


「ったく、ちゃんと場所とタイミングはわきまえてるんだろうな?」


「あ、当たり前だろ?どうしても使わないとダメなタイミングでしか使ってねぇよ」


「どうだかねぇ」


 シナツはニヤニヤしている。くっそ。


「っていうか、何でここにいるんだよ!?旅してたんじゃねぇのか!?」


 ソウルはバンバンと床を叩く。というか、なんで家の場所知ってんだ!?


「まぁ、お前のことはスカーハ婆さんから聞いたからな。変な因果だよ全く」


 シナツは呆れたように告げる。


「スカーハ婆さん?」


 誰だ?


「んぁ?まさかあの婆さんお前に名前を教えてねぇのか?錬金屋の死にかけた婆さんだよ」


「メルヘン婆さんか!?」


 ソウルは驚きの声を上げる。


 まさかそこから情報が漏れるとは思ってもいなかった。...というか、あの婆さんに家の場所教えたっけ.......?


「メルヘンって言葉はあの小汚い婆さんには似合わんだろ...。まぁそうだ。ちょいと野暮用があってな。そしたらお前が店に出入りしてるって聞いたもんだからついでに様子も見に来てやったって訳だ。感謝しろ?」


「恩着せがましいやつだ...」


 ソウルはシナツにジト目を向ける。



「おら、聞いてやるから騎士になったお前の話を聞かせてみろよ」



 シナツはおちょくりながらもどこか優しい視線を向ける。


 それはまるで息子の話を聞いてくる父親のようだった。


「...ったく」


 そんなシナツの姿にソウルは自然と頬が緩む。


 なんだかんだでソウルのことを心配してくれているのだと、6年の付き合いでソウルは理解できていた。ただ、ぶっきらぼうで不器用だからこんな言い方しかできないのだろう。


「しゃーねーなぁ。聞かせてやるよ」


 ソウルは照れくささを隠しながら入団試験の事やドランクール遺跡、サルヴァンのことを語った。


 シナツは面白くなさそうな顔をしながらも、どこか楽しそうにソウルの話を聞いてくれる。


 ソウルはそれが嬉しくて一晩中シナツに自身の体験を語り明かすのだった。


ーーーーーーー


「ったく。話しきったら満足して寝やがって」


 シナツは毒を吐きつつも語り疲れて眠るソウルに布団をかけながらソウルの寝顔をそっと眺める。


 旅をしていた頃よりも少したくましくなったソウルを見て自然と笑顔がこぼれた。


「少し見ない間にまたでかくなりやがって」


 シナツはソウルの話を聞いて安心した。騎士としても立派にやっているようだし、何よりソウルが頼れる仲間に出会えたことが嬉しかった。


「俺がいなくても、充分やっていけそうだな」


 きっと、シナツの元を離れてもソウルは自分で立って歩いていけるだけの強さを持っているし、それを共に支え合う仲間にも巡り合えたようだ。


「...立派にやれよ、ソウル」


 頭をガシガシかきながらシナツは立ち上がる。


 そういえばこの髪をかく癖をソウルが真似してやり出したのはいつ頃からだったか、なんて事を考えながらシナツはそっとソウルの部屋を出るのだった。

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