アルのバイト先
「ふぅん。じゃあ人魚の存在は確実なんだね」
レイが頷きながら答える。
「あぁ。だからまぁ人魚を見つけられる可能性は出てきたってわけだ」
ソウルはレイとシーナに老婆から得た情報を共有する。アルはバイトがあるとのことだったのでまた次会えた時に伝えることにした。
「うーん、だとしたらなおさら今人魚が出てきた理由が気になるね」
「おれもそこが気になってる。なんかめんどくさい事が起こらなければいいんだけど...」
レイもソウル同様に人を避けてきた人魚の目撃情報が出てき始めた状況に疑念があるようだ。
「でも、こればっかりは行ってみないと分からないや。向こうで情報を集めることにしよう」
「そうだな」
「.......ん」
ソウルとシーナもレイの意見に賛同する。
「それじゃ、せっかくだしこのままご飯でも食べに行こうよ」
「お、いいな。んじゃあ前行ったハンバーガー屋につれてってやるよ」
「.......ソウルがサイフ盗られた所?」
「お、おぅ」
シーナが痛いところを突いてきた。
「今日はサイフスられてない?」
「スられてねぇ!」
レイも面白がってシーナに便乗する。こいつ.......!
そんな感じで以前のハンバーガー屋に向かおうとしていた時だった。えらく行列ができた店があることに気がつく。
「なんだ?」
「うーん、喫茶店か何かみたいだね」
「.......すごい賑やか」
シーナが背伸びしながら中を見た時だった。
「はーい、それではまたいらしてくださいですわー」
「う、うん!また来るよアルちゃーん!」
「「「.......」」」
すごい見覚えのある顔がいるような気かするのだが...。
「あら?」
すると、こちらに気がついたのか可愛らしい制服に身を包んだアルがトコトコとこちらへ歩いてくる。
「偶然ですわね。たまたま通りかかったんですの?」
「.......アル、お前が手伝ってるっていう喫茶店って」
「えぇ、ここですわよ」
アルはあっけらかんと答える。
そうか...これで合点がいった。なんで再召集の日にあれだけ男たちがアルに群がっていたのか。
ここの店の制服はメイド服に近いようなかわいらしい黒と白のフリフリのスカート。しかも普段飾り気のないアルもしっかりと化粧を施されたことで普段の数倍かわいらしい印象を与えてくる。さらにはアルの兎の耳が絶妙に制服にマッチしていた。
それらが合わさって今のアルは超絶美少女だった。それで変なファンができてたってことか。
行列のほとんどは男、しかもアルと話しているソウルに殺気じみた視線を送ってくるのが何よりもの証拠だ。
「とても忙しいのでまた後でお話しましょうですわー」
そう言いながらアルは手を振りながらパタパタと店内へと戻っていく。
「お、おぅ。がんばれよ〜...」
行列から射殺されそうな視線を感じながらソウルは手を振り返すのだった。




