再会のエドワード
召集がかけられた部屋はまるで大学の教室のようで、前に黒板と机が大量に並んでいる。机は後ろにいても見やすいように階段のようになっていた。
入室後、まだ時間があるようなのでソウルは部屋の後ろの方でエドワードと話をすることにした。
「何でお前がここに居るんだ?」
壁にもたれながらソウルはエドワードに尋ねる。ソウルに負けたエドワードは入団試験に落ちたはずだが.......。
「2次試験があったんだ。そしてそこで何とか残り少ない枠に入り込めたってわけさ」
エドワードは答える。
そうか、あの試験あれで終わりじゃなくてまだ敗者復活戦みたいなものがあったのか。
「でも、まさかこうして君と同じ任務に就くことになるなんてな。...あの時はすまなかったよ」
そう言うとエドワードは深く頭を下げる。
「気にすんなよ。お前があの時オリビアにあぁでも言ってくれなかったら俺は試験すら受けられてなかったかも知れねぇし、お互い様ってことにしとこうぜ」
ソウルは申し訳なさそうなエドワードに笑顔を返す。
「.......ありがとう」
ソウルの言葉を噛み締めるようにエドワードは礼を言った。そんなエドワードの姿がソウルには印象的だった。
「.......何と言うか、お前何か吹っ切れたような気がするな」
「吹っ切れた?」
ソウルの言葉にエドワードは不思議そうな顔で問い返してきた。
「何と言うか、あの時のお前は余裕がなさそうというか死にものぐるいと言うか.......。苦しそうだったけど、今は晴れ晴れしてるというか、穏やかというか、そんな感じがする」
お互いに全力をかけて戦ったソウルだから分かる。あの時のエドワードは万が一にも勝ちを逃さないようにじわじわと攻め立ててくるなど、まるで何かに取り憑かれたようだった。
だが、今の彼はそんな影を思わせないようなありのままの姿をしているように見える。
「ふっ、それは君のおかげだよ」
「俺?何もしてないぞ?」
「いいや。君と全力を尽くして戦ったことで貴族として僕に必要なものが何なのかと言うことが理解できたんだ。本当に君と戦えて良かったと、心の底から思っている。だからこうして同じ任務につくことができるのは本当に嬉しい」
「.......そっか」
ソウルもふっと笑顔がこぼれる。
あのエドワードとの戦いはソウルにとっても特別だった。
自分の全てを出し切った戦いはあれが初めてだったし、ソウルの10年以上の努力が報われた瞬間だったからだ。
そのエドワードもソウルとの試合で何か大切な物を取り戻すことができたというのなら、それはソウルにとってもとても誇らしく、嬉しい事だと感じる。
「.......むぅ」
すると、隣でしゃがみ込んでいたシーナが膨れだした。
「ど、どうした?」
「.......なんか、ヤダ」
ムッスーとリスのようになりながらシーナはジト目を向けてくる。な、何だ?
「ふっ、すまない。ソウルを独り占めしてしまったね。また顔を合わせることもあるだろうから僕はこれで失礼するよ」
そう言ってエドワードはギドたちのチームの席へと戻っていく。
「.......むぅ」
それを見ながらシーナはふいと目をそらす。
「.......えーと?」
どうすればいいんだろう?ソウルは対応に困ってしまう。
「ほら、ソウル!シーナ!そろそろ説明が始まりますわよ!」
そんなことを考えていると、レイと先に席に向かっていたアルがやってきた。
そのままアルはソウルとシーナのの手を引いて席へと引っ張っていく。
「ちょちょっ!?待てってアル!?」
「待ちませんわ。早く席に着きますわよ」
「歩ける!自分で歩けるって!」
ソウルの制止を無視してアルはグイグイと2人を引っ張っていく。
「.......あ」
シーナはアルが握るソウルの手を眺める。そして胸にチクリとした痛みを感じた。
「.......やれやれ。これから先も心労が絶えなさそうだなぁ」
その様子を遠目に見ながらレイは1人ため息をつくのだった。




