決着
考えるよりも体が先に動いていた。
死なせない、何があってもだ!
だから、ここで彼を終わらせるわけにはいかない!!たとえこの命に替えてでも!!
『必ず成功させろ。貴様には10年分の文句が溜まりに溜まってるんだ』
『だからこれを始まりに俺達は変わっていこう。その為にはやっぱりあんたが必要なんだよ』
『私は君に死んで欲しくないんだ。この町を、ビーストレイジを率いていくのはやはり君であるべきだ』
『レグルスおじさん.......。いなくなって欲しくないですわ』
みなからかけられた言葉がレグルスの脳裏に溢れる。きっと、彼らの想いを裏切るような結果になってしまうだろう。
それでも、ここでソウルを死なせるわけにはいかない。ソウルはこの世界の未来を明るく照らす希望の光だ!彼の光は闇で苦しむたくさんの人々を救い、励まし、そして導いていくのだ!それは彼に救われた自分が1番知っている!!
レグルスはスフィンクスとソウルの間に無理やり自身の体をねじ込む。そして次の瞬間、スフィンクスの剛爪が彼の身を引き裂く。その一撃は彼の内臓までも引き裂いた。
「ガフッ」
身体から溢れる流血と共にレグルスの意識が飛びそうになる。
だが、ここで果てる訳にはいかない。ソウルを、未来を守る!!
薄れる意識の中、半獣の王レグルスは自身の拳にマナを溜めながらスフィンクスの前足を掴んだ。
「グオッ!?」
スフィンクスはレグルスを振り払おうと前足を引っ張るがレグルスはビクともしない。
邪魔だ!とスフィンクスはもう片方の前足をレグルスに振りかぶろうとした。
だが、その爪はビタリと宙で止まる。
「させぬぞ.......」
決死の覚悟でレグルスはスフィンクスを睨みつける。彼の身体から溢れるマナはまるでオーラのようにレグルスの身体を包み、圧倒的な威圧を放っていた。
その姿にスフィンクスは硬直し、身体を動かすことができなくなる。
もう虫の息だというのに、何故そのような目をすることができる?
あと一息で殺せるはずの相手に、何故我は恐怖している!?
いや!もう潰せば終わるのだ!!こんな死に損ないを恐れる必要など.......!
その時。スフィンクスの脳裏に声が響いた。
『認めるんだ、スフィンクス。お前はレグルスに負けたんだ』
ドドドドドドドド!!
すると、スフィンクスの背中に数多の魔法が突き刺さる。
「野郎どもぉ!!スフィンクスを止めろぉ!!ここで奴を仕留めるぞぉ!!!」
サルヴァン兵とビーストレイジ達の援護射撃だった。
「うおおおおお!!!」
それを見たレグルスは、魔法の雨に身を揺るがすスフィンクスの口中へと拳をたたき込んだ。
「レグルス...よせ、やめろ!!」
ソウルは目の前に立つレグルスの名を叫ぶ。
「.......ソウルよ」
そんなソウルにレグルスは掠れた声で呼びかける。
「お前は、光だ。これから先...この国の未来を照らす希望だ.......。俺は...この町は...お前に救われた!」
そしてレグルスはごほぉと口から大量の血を零す。だが、それでも続ける。きっと、これが最後だ。これを逃せばもう二度と伝えるチャンスはないだろうから。
「だから、お前にこの国の未来を任せる.......!お前に救われた、1人の獣人として、そして我が人生の最後の友として、全てをお前に託そう!!!」
そう叫びながらレグルスは拳から最後のマナを振り絞った。
「俺の全てを我が友に捧げる!!未来を導く炎星となれ!!【炎星】に【拳】と【獅子】のマナ!!【レグルス】!!!」
レグルスの拳から獅子の顎が放たれる。【レオ】とは違い圧倒的な破壊力ではなく1点に力を振り絞った貫通力のある一撃。
あぁ、そうか。あの時の父とカールはこんな気持ちだったのか。未来をレグルスに託し全てを捧げてくれたあの偉大な2人も、こうして.......。
「ガッ.......グッゴォッ.......!?」
スフィンクスの口内へと魔法【レグルス】の炎が流し込まれていく。それはスフィンクスを内側から破壊し、スフィンクスの体がみるみる膨張していく。
「共に逝くぞ!スフィンクス!!そしてケインよ!!俺は今スフィンクスをも超える!!お前との約束もここで果たそう!!!」
「グオォォ.......!レグ......ルス.......!」
それを聞いたスフィンクスが声を上げる。
「あ...りが.......とう」
ドゴオオオオオオオオオオオオン!!!!
巨大な爆裂音と共にスフィンクスの体が赤い業火を放ちながら弾け飛んだ。
 




