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ジャンヌの戦い

 ソウルに気を取られていたローブの男にジャンヌは斬撃を浴びせることができた。この一撃は大きいだろう。


 そしてこの好機を逃さないためにさらに追い討ちをかける。


「【瞬撃】のマナ!【ハルペス】!」


 ジャンヌがエクスカリバーを振ると、それに付随するように7つの斬撃がローブの男に襲いかかる。


「【深淵】に【連撃】のマナ。【邪神進撃】」


 すると、ジャンヌが斬り裂いたフードの隙間から複数の触手が飛び出し、ジャンヌの剣撃を全て弾いていく。


 ガキキキキキィン!


「貴様...一体何者なんだ?」


 目の前の男はもはや人間の姿をしていない。ローブの下には一体どのようなおぞましい姿が隠されているのか。


「ふふふ。聖女様に興味を持たれるとは嬉しい限りです」


 だがハスターはそう言ってはぐらかす。


「いいだろう。ならば貴様の体に聞くまでだ!【秘剣】のマナ、【アダマス】!」


 ジャンヌはエクスカリバーに新たなマナを込める。そひてエクスカリバーは光を放つと一筋の光線を放った。


 それは【閃光】よりも細く、弱々しい魔法だった。


「ぬるいですよ、聖女様」


 ハスターはそんなジャンヌの魔法を触手で叩き落とそうとした。


 クンッ


「なにっ!?」


 すると光線が突然軌道を変え、触手を回避したかと思うと、そのままハスターの胸を鋭く貫いた。


 ドシュッ


 アダマスは変幻自在の光の剣を放つ魔法だ。威力はさほど高くないが細かく操作することができる器用な魔法だった。


「ふふふ...楽しいですね聖女様」


 だが胸を貫かれた筈のハスターは全く効いていない様子でこちらを見る。


「.......」


 何者なんだこいつは?ジャンヌは得体の知れない相手に動揺する。今こんな謎の化け物がこの国で暗躍しているとでも言うのか。


「【深淵】のマナに【鎌】と【武装】のマナ。【邪神鎌斬(じゃしんれんざん)】」


 ハスターの両袖からそらぞれ1本の触手が現れ、硬質化すると、まるで鎌のような形へと変化していく。


「【武装】のマナ?」


 確か北の帝国がルーツのデバイス・マナだったはず。こいつは帝国の者なのか?いや、それともまた別の勢力が.......?


 ジャンヌは一瞬で思考が巡る。いや、《《巡ってしまった》》。



「隙ですね」



 ハスターがローブの奥で薄ら笑いを浮かべる。


「なっ」


 それは刹那のことだった。ジャンヌの一瞬の思考の隙をハスターは見逃さず、鋭い攻撃を放つ。


 ジャンヌが意識をハスターに戻した時には2本の触手が眼前に迫っていた。


 ザシュッ!


「ぐっあぁ!?」


 辛うじて1本の触手は弾くことができたがもう1本は間に合わない。なんとか体を捻らせるが触手はジャンヌの背中をバトルドレスの上から斬り裂いた。


 その瞬間、ジャンヌは心に暗い影が差すような感覚に陥る。


 な、何だこれは.......?


「これでおあいこですね」


 そしてハスターは両腕の鎌を振り回す。


「ぐ...」


 対するジャンヌはエクスカリバーで攻撃を弾くが体が重い。毒か何かだろうか?


「ここであなたを死なせるのは惜しいですね...どうでしょう、我々の仲間になりませんか?」


 すると、ハスターはとんでもないことを語り始めた。


「ふざけるな。お前たちなんぞと共謀するつもりなどない。私の役目はこの国を守り抜くことだ!」



「それは、本当にあなたの望みですか?」



「なんだと?」


 するとジャンヌの心を見透かしたようにハスターは告げる。


「幼き頃から聖剣使いとして育てられ、あなたの意志などお構い無しにこの国のために戦えと...強要されてきたのでは?」


「なっ、何を.......?」


「あなたは本当はもっと自由に生きたかったのでしょう?あなたの本当の心は?」


「ち、違う。この国を導くことは私の意思だ!」


「本当ですか?心の底から誓えますか?」


 ジャンヌの思考が濁る。わ、私は...私は.......?頭がボーッとして視界が回り始めた。


「耳を貸しちゃダメですよ、ジャンヌ様!!」


「!!」


 そこにハミエルの声が響き渡る。そうか、シーナを解放して戻ってきてくれたか!



「【黒渦】のマナと【強撃】のマナ!【加速ブースト】!」



 するとハミエルの前方に黒い渦のようなゲートが開く。そしてハミエルがそこに飛び込むとハミエルは超加速しハスターへと突撃した。


「新手ですか.......もう少しの所を.......!」


 ハスターは舌打ちをしながら鎌をハミエルに振り下ろす。


「【黒渦】と【転移】のマナ!【転送(ワープ)】!」


 再びハミエルの前方に黒いゲートが開き、ハミエルはゲートへと飛び込む。


 ドスンッ!


 そしてハミエルの蹴りがハスターの背中に突き刺さった。


「な.......に.......!?」


 目の前にいたはずのハミエルが消え、ハスターの背後に現れる。


 ハミエルの後ろにはハミエルが飛び込んだのと同じようなゲートが開いていた。


 どうやらゲートからゲートへと転移することができるらしい。


「厄介な魔法を使う.......!」


 ハスターは悪態をつきながらハミエルへと鎌を振る。


「【転送】」


 しかしハミエルは再びゲートの中へと姿を消し、ジャンヌの隣へと移動する。


「ジャンヌ様、奴の言葉は人を惑わせる。真に受けちゃダメですよ」


「そ、そうだったな」


 ジャンヌは朦朧とする頭を抱える。そうだ、奴のせいでこの町の人々も惑わされたのだ。気をしっかり持たなければ!


「また役者が増えましたか。いいでしょう、2人のともここで私の相手をしてもらいます!」


 ハスターは再び鎌のような触手を振り回しながら叫ぶのだった。

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