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引き継ぐ想い

 腕が熱い。


 かなり傷は深いようだ。握る拳に力が入らない。ここまでなのか.......。レグルスは自慢の拳を奪われて心が弱る。


 だが、そんな彼の耳に言葉が響く。


「レグルスおじさん!」


「お願い!負けないで!!」


 それはアルの声.......。


 自分の娘のように大切な、あの娘の声にレグルスの意思が再び炎のように燃え上がる。


 そうだ...負けられない。あの子が.......アルが、ケンが、ジークが、ジャックが.......みんなが笑って生きていけるように、全てをここで終わらせられるように。


 後のことなど知らない。腕がもげようと、足を失おうとも、ケインとサイルを倒せれば。未来が...彼らに明るい未来が繋がればそれでいい!!


「っ!!!」


 レグルスは弾かれたように立ち上がる。そしてその目前には業火を振り下ろす宿敵がいる。


「うぉぉおおおおおおお!!!!」


 バシィッ!


 そしてレグルスはケインの振り下ろす業火を白刃取りした。


「そんなことをしても無駄だあ!」


 ケインのマナは地獄の釜のように熱く、レグルスの腕がじゅくじゅくと焦げていくのが分かる。



 だが、レグルスの燃え上がる心はそんな事ではもう止まらなかった。


「この町が救われるのならば!俺の命など惜しくない!!みなが笑顔で生きていける糧となるならば、両の腕などいくらでもくれてやる!!」


 レグルスは焦げる両の腕に力を込めながらマナを溜めた。


「拳を失ったお前に何ができる!!」


 ケインはそんなレグルスに怯まずに剣に力を込めレグルスの頭を真っ二つに切り捨てようとする。だが、もう遅い!


「【炎星】に【獅子】のマナ!!」


 レグルスは詠唱する。かつての偉大な父の背中を思い出しながら、その想いを引き継ぐように。


 未来を照らす、希望をつなぐために。


「未来を導く百獣の王よ!今ここに顕現せよ!!【レオ】!!」


 レグルスの体からマナが弾ける。弾けたマナはケインの足元に展開し、魔法陣が現れた。


「なっ!?」


 予想外の攻撃にケインは慌てて飛び退こうとする。だがレグルスが掴む剣はビクとも動かず動きが止まってしまう。


「グォォォォォォォ!!!」


 そして、魔法陣から炎の獅子が飛び出すと、そのままケインに喰らいついた。


 かつて、父が見せた獅子の魔法。この俺を未来に繋ぐ為に残してくれた魔法だ。


 今度は俺が繋ぐのだ。後に続く者を未来へと!その決意を表すように炎の獅子は激しく咆哮し、ケインを空高く打ち上げた。


「ぐっ、うぉおおおおおおおおおお!!!」


 ケインはガードするがそれは焼け石に水だった。


 炎の獅子【レオ】はケインに喰らいつき、そのまま天井にケインを叩きつけた。


「ば.......かなぁ!?お前に...こんな.......魔法がぁ.......!」


 ケインはその身を焦がしながら叫ぶ。


 ケインの知るレグルスは拳を使った魔法しか使えなかったはずだ。こんな魔法など、見たことがない。


「10年前のあの日、父の意志を引き継ぐために鍛え上げたんだ!この10年の想いの全てがその魔法に込められている!!打ち破れるものなら、打ち破って見せろ!ケイン!!」


 レグルスはそのままケインを、撃ち抜くように拳を振り上げた。


「うおぉ.......うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 ゴォンと天井は砕け、【レオ】はケインを上階へと打ち上げた。


「.......これで、これで」


 ケインとの因縁はこれで断ち切った。後は全ての元凶であるサイルだけだ。


 だがレグルスの体から力が抜け、ぐらりとバランスを崩す。


「レグルスおじさんっ!」


「ボス!」


「レグルス!」


 だが、それを受け止める6つの手。


「.......すまんな」


 レグルスはそれに身を委ね、脱力する。


「いえ...いえ!!ご立派でしたわ.......!」


 アルは泣きじゃくりながらレグルスに抱きついた。


「ったく、ひやひやっすよ」


 ケンは軽口を叩きながらも嬉しそうに告げる。


「.......お疲れ、レグルス」


 そしてソウルは拳をレグルスの腹に当てた。


「あぁ...ありがとう」


 レグルスは急がなければならないことは分かっている。


 だが少しの間その感傷に浸る。きっと、これが最後になるのだから。

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