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料理対決

「も、申し訳ありませんでしたわ...」


 そう言ってアルはソウルの青くなった頬に軟膏を塗ってくれる。


「い、いいよ。おれも悪ノリしすぎた」


 ソウルは苦笑いしながらため息をつく。あんなに動揺するアルが面白くて、ついやりすぎてしまった。


「ソウル兄ちゃん大丈夫か?」


 ソウルの太ももを枕にしながら狼の少年ラルフはソウルを見上げている。


「おぅ、男がこんな女の拳で泣いてちゃダメだからな.......っていててて!?」


 するとアルがソウルの頬をつねってきた。


「ダメだよアル姉ちゃん、女の子はもっとおしとやかにしなきゃってお母さんが言ってたよ?」


 それを見ながら猫の少女ポーラがアルのそばで告げる。


「私は女として生きるつもりはありませんからいいんですの」


 そんなポーラの言葉にアルはぷいっとそっぽを向く。


「えー、そんなんじゃソウル兄ちゃんに嫌われるよ?」


 豹の少年ヨハンは面白そうににやにやしている。


「嫌われていいんですの。そんなことばっかり言ってると怒りますわよ」


 そしてアルがギラリとヨハンを睨む。


「もう怒ってるよぉ」


 それを見ながらヤギの少女メリーは涙目になる。


 アルがソウルに鉄拳制裁を加えた後、6人はアルの家に移動していた。


「ほら、もう夜も更けましたわ。そろそろご飯の準備といきましょう」


「「「「はぁい」」」」


 そう言って5人はパタパタと夕食の支度に取り掛かった。


 ソウルはその光景を複雑な気持ちで見守る。


 アルの話によると、この4人の子どもたちはこの戦いで親をなくしている。それをアルが引き取って面倒を見ているとのことらしい。


「だから、このテント少し広かったんだな」


 アルの暮らすテントはアルが1人で暮らすには広い。恐らく子どもたちのために大きいテントを用意したのだろう。


 ちなみにソウルがアルの家で厄介になっている間は子ども達はレグルスの家にお邪魔していたそうだ。


「よし」


 ソウルは腰を上げる。世話になってる身だ、何か手伝うとするか。


「おれも手伝うよ」


 ソウルはキッチンに立つアルに声をかけた。


「はぁ?何をおっしゃって?」


 アルはクルクルと包丁を回しながらソウルを小馬鹿にするように告げる。


「私1人で十分ですわ」


 この手慣れた包丁捌き...たしかに料理の腕に自信がありそうじゃないか。


「おれだって料理には自信があるんだ。世話になってる身だからおれにも手伝わせろって」


「いいえ、あなたは足でまといなのでベッドにでも転がってなさいな」


 だが、アルも譲るつもりはなさそうだ。


「ほぉ」


「ふん」


 2人の視線に火花が散る。


「だったら、白黒はっきりつけようじゃねぇか!」


「えぇ!望むところですわ!」


 こうしてソウル対アルの料理対決の火花が切って落とされた。



「ほんと、あの2人仲良いよな」


「お似合いだよね」


「もう結婚しちゃえばいいのに」


「バカ、アル姉ちゃんに聞かれたら殺されるぞ」



 そんな子どもたちの会話が耳に入らないほど2人は料理に熱中するのだった。


ーーーーーーー


「お、おぉ~」


 子どもたちは思わず感嘆の声を漏らす。


 ソウルとアルはお互いに負けんと料理をした結果、夕食はかなり豪勢なものに仕上がった。


「さぁ、たっぷり食べな!」


「遠慮はいりませんわよ!」


 2人はフンと胸をはる。


「「「「いただきまぁーす!」」」」


 そして子どもたちは美味しそうに料理を口に放り込んでいく。


「「.......」」


 その幸せそうな子どもたちの顔を見ていると、料理対決の事など馬鹿らしく思えてきた。


「.......今回は、引き分けということにしておきましょう」


「.......そうだな。こいつらが美味そうに食ってくれてるならそれでいいや」


 そう言ってソウルとアルも食事につく。



「何だよ、ほんとに料理上手いじゃんか」


 アルの作ったシチューは優しい味わいで疲れた体に染み渡るようだった。


「あなたのこの焼き魚も、あの少ない調味料の中で素材の旨味を最大限引き出していますわね」


 アルもむむむと悔しそうに焼き魚を口に運ぶ。


 それを見た子どもたちが嬉しそうに笑っていることに2人は気づいていなかった。

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