124/1167
間章
アルは1人テントの前でうずくまっていた。
「どうして、私はあいつをここへ連れてきてしまったのでしょう...」
アルの頬を一筋の涙が流れる。
「.......いえ、私が間違っておりましたわ。あの人間はやはり殺しておくべきですわ」
そう呟きながらアルはすくりと立ち上がりナイフを握りしめる。
しかし、アルの脳裏をよぎるのは獣人と戦うことに苦悩するあいつの顔。あいつがアルを崩落から庇い血を流すあの光景だ。
アルの決意がまた揺らぐ。ナイフを握るアルの手は震えていた。
「っ!このっ」
アルは迷いを振り切るように自分の腕を叩く。
「.......もう、決めたはずですのに」
そしてアルの心はまた行き場を失い闇に落ちる。
「お母さん.......私は.......私は.......どうすればよろしいんですの?」
その問いに答えてくれるものは、もういなかった。




