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案内人

 シンセレスの南の港。


 かつてヴェンと出会ったシンセレスのハトボル港とは違い、色合い鮮やかな建物や様々な形式の家が立ち並ぶシンセレスらしいと言った様相の港街。


 シンセレスの海路の中心地、ドルミナ港にソウル達は降り立った。


 ドルミナ港にやって来たのはフェラルドに渡るソウル、シーナ、レイ、ヴェン、エリオット、そしてライ。


 そんなソウル達を送るためにパメラがついて来てくれた。


「さぁ、こっちなの〜」


 リュカの荷馬車を降りた後、パメラに続いて歩いていくと目の前に見上げるほど大きな船が現れた。


 木造のそれには大きな柱が3本。それぞれに白くて大きな帆が折りたたまれた状態で括り付けられている。


 そして、何より特徴的なのは船の側面につけられた水車の様な巨大な構造物。


「何だこの船。見たことねぇ形だけど」


 普通、船にあんなもの付いていない。むしろ船を動かす上で邪魔になりそうな物だが。


「ウィールシップなの。パメラ達シンセレスの技術の全てを注ぎ込んで建造したシンセレス最速最高性能の船なんだよ〜」


 ウィール。つまりは水車ということ。


「何で船に水車が?」


「推進力にするためだよ」


 ソウルの問いに答えたのはヴェンだった。


「あれは確か魔導機で水車を回して船の推力にする仕組みだったはず」


「へぇ。そんなのあんのか?」


「うん。実物を見るのは初めてだけど、船乗り仲間の間で噂になってたんだ。シンセレスが風が無くても動くイカれた船を作ったとかって」


「その通りなの!風が無くても魔導機の力で水車で水を漕いで前に進むし、その気になればバックする事もできるんだよ」


 どうやらあの水車を回して進むことができるらしい。それならば無風でも前に進むことができるというわけか。


 流石魔導機の国ことシンセレスである。

 

「……揺れない?」


「大丈夫なの。むしろ魔導機で操作する分普通の船よりも揺れないぐらいだよ」


 毎度乗り物にえらい目に遭わされるソウルは胸を撫で下ろす。今度こそ……今度こそ!快適な旅が保証されたということだ。


「ソウルくん達が向かうのはねぇ、フェラルドの中でもシンセレスとの交流が深かった和国なの」


「和国か。一体どんな国なんだ?」


 確かフェラルドは4つの小国が集まった国。和国、華国、印国、元国だが、ソウル達が向かうのは和国と言うことらしい。


 だが、ファラルドはこれまで渡り歩いて来たどの国とも違った文化の国。一体どのような国なのだろうか。


「そうだねぇ。和国はお侍さんがまとめる国なんだよ」


「侍?」


「うん。イーリストでいう騎士みたいなものなの」


 イーリスト国の騎士は言わば治安を守ったり国のために戦う戦士だ。


 となれば、その侍とやらも騎士の様な戦士なのだろうか。


「お侍さん1人1人が刀を持っててねぇ、自分の魂のように大切にしてるんだって。後は武士道っていうお侍さん特有の倫理観みたいなのもあって、何だかもうすごいの」


「武士道……なんか昔本で読んだことある気がするな」


 確か、昔好きだった本の登場人物に侍だとか武士道だとか、そんな話が出てくることがあった気がする。


「何だか、遊びに行く訳じゃないけど面白そうだね」


 パメラの話を隣で聞いているレイもまた楽しそうにしていた。


「和国はもう私達とは着てる服から違うからねぇ。着物って言ってすごく綺麗で可愛らしい服を着てるんだよぉ」


 着ている服から違うのか。レイの言う通り少々楽しみになってくる。


 その旅が、途方もない無理難題を課せられていなければだが。


「長い間国交も無かった国だからねぇ。他の国では見られない様な面白い文化が沢山あるの」


「でも、そんな国で俺らうまくやれるかな?」


 エヴァはディアナの塔を離れられないし、当然パメラもエヴァの手伝いでシンセレス国を離れられない。


 そんな未知の国で案内もなく果たして交渉などやれるだろうか。


「安心してなの。ちゃーんと和国に詳しい案内人がついてるの」


「和国に詳しい案内人?」


 そう言ってパメラが大きな帆船の方を指差す。すると、帆船のデッキの上からこちらを見下ろす1つの影があった。


 腰に手を当てて、誇らしげに少し大きめな胸を張る1人の女性。ピンクの癖っ毛に、メイド服が潮風に揺れている。


 ソウル達を空色の瞳で見下ろすその人は……。


「………………」


「アリア!」


 夜凪のアリア。


 魚の召喚士。エヴァに仕えし3人の従者の1人。そんな彼女が何故か頭に海賊のかぶる帽子を乗せて、得意げな顔をしてこちらを見下ろしていた。

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