サルヴァンの過去4【10年】
「レグルスおじさーん!」
「おぉ!アルか!」
戦いから戻ったレグルスは8歳になったアルがこちらに駆け寄ってくるのを見つける。
「こら、アル。レグルスは疲れておりますのよ?」
「えー...」
ハルの制止にアルはブーと膨れた。
「ふっ、構わんさ!ほーらアル!ぐるぐるぐるー!」
「きゃーっ、あはははは!!」
しかしレグルスはそんなアルの手を掴んでぐるぐると回す。
「全くもう」
ハルも口ではそう言うが、微笑ましそうに2人を見守っていた。
「おーい、アルー!一緒に遊ぼーぜー!」
「あっ、ケンですわ!今行きますわー!」
「気をつけてな」
「はい!いってきますわ!」
そしてアルは元気に駆け出して子どもたちの輪の中に混じる。
「.......大きくなったな」
「えぇ、ほんとに」
成長したアルはよく笑う明るい性格に育っていた。
「今日はどうでした?」
「まぁまぁだな」
「そう.......」
そう告げるハルの表情は暗い。
「.......いつまで、続くのでしょう。この戦い」
「.......分からぬ。だが、必ず終わりは来るはずだ」
2人はアルの未来が明るいものであることを祈りながら告げるのだった。
ーーーーーーー
「今回の首尾は?」
「まぁまぁだ、父よ」
長のテントへと足を運んだレグルスはレオに報告する。
「だが、最近のサルヴァンは手強くなりつつある。これまで以上に苦しくなるかもな」
サルヴァン兵の質もここ最近でかなり上がってきている。これから先の戦いは一層苦しくなることが予想された。
「後は、サルヴァン側に妙な動きがある」
すると難しい顔をしたカールが報告する。
「妙な動き?」
「あぁ。どうやらスフィンクス討伐に動き始めているそうだ」
「スフィンクス討伐だと?」
レオは思考を巡らせる。
ビーストレイジとの戦いの中で疲弊しているのはサルヴァンも同じはず。どう考えても今スフィンクス討伐に動くメリットは無いはずだ。
「何か、考えがあるのか?」
レオは頭を抱える。その時だった。
「伝令っす!サルヴァンからスフィンクス討伐の為の援軍要請が入りました!」
ジョンがレオのテントに飛び込んでくる。
「ば、バカか!?やつら今の状況を分かっているのか!?」
カールはたまらず叫ぶ。
「.......誰からだ?」
「そ、それが.......」
ジョンは困ったように告げる。
「援軍要請を伝えてきたのは、ケインです」
「ケインだと!?」
レグルスはかつての友の名に動揺を隠しきれない。
「.......」
「よせレオ。こんなのどう考えても罠に決まってる」
「.......いや、話だけでも聞きに行こう」
「正気か!?」
レオの判断にカールは思わず身を乗り出す。
「あぁ、我々は獣ではない。対話もせずに攻撃を仕掛けるのは獣がすることだ。我々は心まで獣に堕ちてはならん」
「レグルス.......」
「だが、万全を期すに越したことはない。カール、レグルス。着いてきてくれるか?」
「あぁ、もちろんだとも」
「任せろ」
レオの頼みに2人は頷く。
「.......私も参りますわ」
「ハル!?」
そこへ話を聞いていたのかハルが姿を現した。
「やめろ、お前になにかあればアルは.......」
「でも、ケインが来るのでしょう?」
ハルはレオの目を見る。
「彼と話をしなければならないのは、私も同じですわ。どうか、私も同行させていただけないでしょうか?」
「.......分かった。だが危険だと判断したらすぐに逃げると約束してくれ」
「承知しましたわ」
レオの言葉にハルは頷く。
「.......2人が行くなら、おれも行くしかないよな」
そしてそのやり取りを見ていたジョンはやれやれと言いながら告げる。
「あぁ、ならばジョンも来るといい」
そんなジョンにレオはふっと笑みをこぼす。
「久々に4人が顔を合わせることになりそうだな」
レグルスは1人そう呟くのだった。




